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特定健診の受診率はなぜ低い?対処法と受診率向上の対策を解説

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特定健診は、地方自治においては住民の健康、ひいては保険料負担軽減の意味でも重要です。特定保健指導・メタボ健診など具体的な施策にも影響します。特定健診の受診率が低い問題に関する理由と対策について解説します。具体的なデータや事例も交えて説明するので、自治体職員の方はぜひ参考にしてください。


特定健診の受診率が低い理由

データをもとに、傾向や課題感について解説します。
注目すべきは、40代の主婦層や70歳以上の層における受診率の低さです。

特定受診の対象者は40~74歳ですが、以下のように「特定受診」の存在自体を知らない可能性もあります。

・特定健診の対象年齢に達した主婦
・定年退職後、新たに国民健康保険へ加入した方

管轄地域の状況を考慮しながら、今後の対策を検討しましょう。

出典:全国健康保険協会「令和4年度健診受診状況について

保険者別では国保組合の受診率が低い

■保険者別の特定健診実施率

保険者 実施率割合
市町村国保(自営業・退職者・年金受給者など) 36.4%
国保組合(自営業・退職者・年金受給者など) 49.0%
健康保険組合(企業の従業員など) 80.5%
全国健康保険協会(企業の従業員など) 55.9%
共済組合(公務員・私立教員など) 80.8%

出典:厚生労働省「特定健診・保健指導の実施状況_2021年度」をもとに作成

上記の表は、保険者別に特定受診の実施率を比較しています。「市町村国保」や「国保組合」などのいわゆる「国保」は、企業の従業員や公務員が加入している保険に比べ実施率が低い状況です。

実施率に関しては、民間よりも自治体の実施率が低いことを前提として押さえておきましょう。

被扶養者において40代・50代女性の受診率が低い

■女性の特定健診実施率(被保険者・被扶養者)
・被保険者:ワーキングママ・シンママ・独身女性(※協会けんぽのみ)

40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 総計
受診者 29,828 27,743 16,506 2,240 76,317
対象者 41,171 37,457 22,365 3,890 104,883
受診率 72.40% 74.10% 73.80% 57.60% 72.80%

・被扶養者:主婦層(※協会けんぽ・市町村・契約健診機関が対象)

40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 総計
受診者 3,061 3,775 6,687 2,738 16,261
対象者 14,594 15,382 20,144 7,786 57,906
受診率 21.00% 24.50% 33.20% 35.20% 28.10%

出典:協会けんぽ「令和4年度健診受診状況について」をもとに作成

上記は、被保険者と被扶養者の女性の実施率を比較した表です。70歳以上を除くと、すべての年齢層で被扶養者の実施率が低いことがわかります。

特に、40代・50代では差が大きく、受診率が約50%も異なります。仮説として、40・50代女性の被扶養者は主婦層・子育て世代層が多いと考えられます。

つまり、この主婦や子育て世代の層へのアプローチが、国保での特定健診の受診率向上につながると考察できます。

70歳以上は男女ともに受診率が低い

■男女特定健診の受診率(※民間・自治体の総計)

40-49歳 50-59歳 60-69歳 70歳以上 総計
女性 58.98% 59.65% 54.56% 42.63% 56.87%
男性 68.98% 66.35% 66.07% 58.89% 66.70%

出典:協会けんぽ「令和4年度健診受診状況について」をもとに作成

70歳以上では、男女ともに受診率の低下がみられます。定年退職後、保険の切り替えにより特定健診の存在を知らない方が増えたとも考察できます。

先ほど説明した主婦層・子育て世代層に加えて、定年退職後の方向けに訴求することも視野に入れておきましょう。

特定健診の実施内容・必要性が伝わっていない

特定健診に関して、具体的な健診内容を知らない、あるいは正しく認識していない可能性があります。

・持病の検査をしているだけで十分だと思っている
・自治体によっては無料で受けられることを知らない
・健康診断(企業従業員向けの自費負担のもの)と混同している

このような誤解を持つ人もいるかもしれません。施策については今後紹介しますが、定期的な広報が重要です。

受診のハードルが高い

特定健診は年1回でも、生活に手続きが増えると住民の心理的には「面倒」という気持ちが強くなる可能性があります。

・距離的ハードル:特定健診の対応機関まで自宅から離れている
・時間的ハードル:仕事や家事などが優先される
・経済的ハードル:費用がかかる(認識でいる)
・労力のハードル:手続きや予定調整が面倒

特に自己負担が無料であっても、わざわざ行く必要性を感じなかったり、そもそも病院嫌いであったりと、健康意識が低い人も多いのが現状です。
そういった人にこそ特定健診を受けてほしいですが、特定健診の対象者に義務・強制力はありません。
そのため、自治体側から必要性の周知やきっかけづくりなど、積極的に働きかけることが必要です。

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受診率向上の主な施策

各自治体の例を参考に、さまざまな施策を紹介します。特定健診の受診率を増やし、特定保健指導・メタボ健診など住民の健康予防・対策につなげましょう。

PR・周知を実施する

オンライン・オフラインにかかわらず、さまざまな媒体を活用し周知しましょう。

・ホームページでの周知を徹底
・わかりやすい受診勧奨チラシなどの作成
・公共施設でのポスター掲示

特に、特定健診の受診率が低い主婦層・子育て世代層や、70歳以上の層が目に触れる場所で周知することで、特定健診を知らない層へ効率的にアプローチできます。

・ショッピングモールでのキャンペーン実施
・地域のお祭りや親子参加型イベントでのアナウンス・チラシ配布

キャンペーン・特典付与を実施する

「健康月間」「健康ウィーク」といったキャンペーンを通じて、特定健診につながる施策をおこないましょう。「簡単な健康チェック」「粗品の配布」で啓発効果も期待できます。

また、自治体のポイント付与なども効果的です。大阪市の国民健康保険で実施されている例を紹介します。

大阪市の一例

・自己負担金:無料
・電子マネーと交換:初回3,000円相当、2回目以降は1,000円相当

大阪市では、アスマイルというアプリを活用して健康促進を図っています。このようなITを用いた施策はユニークで注目を集めやすいでしょう。

受診しやすい環境を整備する

大阪市の例でもありましたが、受診ハードルを下げる目的で環境・体制を整えるのも有効な施策です。
自己負担0円はもちろん、人間ドックなどオプション検査の均一料金設定なども推奨されます。

交通機関が不便な場合は、受診可能な医療機関の増設やかかりつけ医での対応を進め、距離のハードルを解消しましょう。

また、子育て世代層には一時託児所の設置で、受診しやすい配慮も検討しましょう。

最新技術(DXやAI)を導入する

最新のシステムを導入して、特定受診の受診率が低い理由の一つである労力のハードルを解決しましょう。

LINEチャットで簡単に予約ができるチャットボットの導入や、スマホ市役所のようなオンライン窓口もおすすめです。
高齢の方向けに電話の窓口も残しておき、窓口担当ごと民間に委託して対応力・人員確保につなげる方法もあります。

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受診率向上に役立つ自治体例

先ほど大阪市の例を紹介しましたが、ここからは他の自治体・組合で実施されている施策例を紹介します。アイデアを参考に、地域での活用にお役立てください。

山梨県甲州市

山梨県甲州市では、特定健診の受診率向上に向けてさまざまな取り組みを実施し、受診率が向上しています。

主な施策
・アンケートでの未受診理由に応じた受診推奨
・医師会との連携による受診場所の拡大
・保健環境委員の活用
・組織再編による事務局体制の強化

さらに、健康増進課・峡東保健所・山梨大学医学部で構成される未受診者対策会議を設置し、多角的なアプローチを展開しています。

協会けんぽ滋賀支部

協会けんぽ滋賀支部は、特定健診の受診率向上を目指し、被扶養者個人宛てに案内を送付。さらに、女性をターゲットとした取り組みとして、ショッピングセンターなど女性が利用しやすい会場を設定。健診内容も肌年齢チェックなど、女性の関心をひくトピックで訴求しました。

これらの施策により、被扶養者の受診率が大幅に向上し、特に女性の受診者数が増加しました。

福井県高浜町

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ナッジ理論の応用例を紹介しましょう。ナッジ理論とは、人の行動を不合理なものという前提で行動を研究する心理学の考え方です。特定健診でも直観的に「めんどくさい」と考えて、受診しない人も多くいることでしょう。

高浜町では、がん検診とセットで受診できるようにし、かつ人員配置やテープを用いた導線設計などで特定健診を平均40分で収める効率化を進めました。加えて、当日の簡単な保健指導で、健康への関心を高め、約95%の受診者に後日の個別指導説明を受けてもらうことに成功しています

出典:厚生労働省「明日から使える – ナッジ理論」

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自治体のDX導入アイデア例

LINEの導入で申込のハードルを下げる

先ほども軽く触れましたが自治体のDX導入アイデアとして、LINE公式アカウントの開設が効果的です。これにより、申込ハードルを下げられるでしょう。

具体的には、特定健診に必要なマイナンバーカードの申請、施設予約などをLINE上で簡単にできるようにし、コールセンターとの併用でサポート体制を強化します。

チャットボットで対応工数を削減する

LINEにあわせて役所のページにチャットボットを導入することで、住民からの問い合わせに対してスピーディーで気軽な対応が可能です。

住民は、24時間いつでも質問できるため、時間を気にせず特定健診の受診手続きができます。

また、会場の選択や手続きの案内を感覚的な操作で簡単におこなえます。そのため、複雑な手続きに対する不安感を軽減できるでしょう。

これにより、職員の対応工数が削減され、より専門的な業務に集中できる環境が整います。結果として、特定健診の受診率向上にも寄与するでしょう。

健康診断AIで生活習慣病を予測する

特定健診の際、健康診断AIを導入することで、生活習慣病の予測が可能です。

1. 健診結果をデータ化することで、個人の健康状態を経時的に分析
2.データをもとに、AIが将来的な健康リスクを予測し、次回の健診を促進
3.AIによる分析結果を通じて、住民が自身の健康度合いを具体的に把握

たとえば、現在の生活習慣が続いた場合の将来的なリスクや、改善すべき点などが明確になります。これにより、個人が自身の健康管理に積極的に取り組むきっかけとなり、生活習慣病の予防に貢献するでしょう。

もちろん、こういったAIやチャットボットなどの真新しい技術を導入すること自体が、健診対象者へのアピールにつながります。

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特定健診の受診率向上には当社にお任せください

特定健診のキャンペーンや施策は、心理学やマーケティングのアプローチなどさまざまです。
DX際しては、特に未受診率の高い層へアプローチできます。

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特定受診の受診率に関するよくある質問

受診勧奨について知りたい

受診勧奨とは、健康診断や特定健診への受診を促すために住民個人へ行う働きかけのことです。主な目的は、受診率の向上、疾病の早期発見・早期治療、健康意識の醸成です。

方法としては、住民個人宛ての案内送付、電話による呼びかけ、対面での説明などがあります。
特に受診が未実施の住民には効果的で、特定健診を受診するのきっかけを提供し、受診率向上へつなげます。

出典:厚生労働省「受診勧奨について」

DXの導入方法がわかりません

課題にあわせたDXの選択が重要です。基本的には、民間企業へ依頼するのがよいでしょう。独自で開発するよりも、パッケージをカスタマイズするなど、予算や要望を担当者からヒアリングしてもらいながら、要件を整理して進めましょう。

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