物流倉庫を自動化するシステムとメリットについて紹介
ECの拡大による物流のニーズが高まっている一方、少子化に起因する人材不足の問題や宅配取引個数の増加が生じています。このような背景により、システムによる物流倉庫の自動化は差し迫った課題といえるでしょう。今回の記事は、物流に自動化システムを導入するとどのようなメリット・課題が生じるかについて解説します。
目次
- 物流倉庫自動化の背景
- 物流倉庫自動化のメリット・デメリット
- 生産性が上がる
- コストを削減できる
- 作業品質が安定化する
- 物流倉庫自動化の4つの課題・対策
- 業務フローの見直し
- 導入・運用コストの見積もり
- システムの導入・保守
- 従業員への教育
- 物流倉庫を自動化するシステム6選
- 自動倉庫システム
- 自動搬送ロボット
- 倉庫管理システム(WMS)
- デジタルアソートシステム(DAS)
- デジタルピッキングシステム(DPS)
- 自動ピッキングシステム
- 物流倉庫自動化の成功例2選
- 物流倉庫に自動化システムを導入
- 自動搬送ロボットが作業員の業務を代行
- 物流倉庫の自動化を成功させる2つのポイント
- システムの導入目的を明確にする
- 導入効果を検証する
- 物流倉庫の自動化をアウトソーシングで実現
物流倉庫自動化の背景
物流倉庫では、商品の入庫・保管・出庫の過程でピッキングや仕分け、運搬、梱包の作業が発生します。従来人の手によって行われてきたこれらの作業は、EC需要による個人輸送の拡大と人手不足や熟練者の不足により、円滑に行われなくなっています。
このような問題を解決するためにも、自動化は物流倉庫における課題となっています。自動化は人材不足を解消するだけでなく、ミスの軽減や稼働率の向上なども望め、生産性に大きく寄与します。
物流倉庫自動化のメリット・デメリット
物流倉庫を自動化するメリットとデメリットを以下にまとめました。
物流課題 | メリット | デメリット |
---|---|---|
人材不足解消 | ・省力化 ・効果的な人材配置 |
– |
生産性向上 | ・作業効率の改善 ・稼働率の向上 |
・システム障害時の生産性低下 |
品質向上 | ・ヒューマンエラーの軽減 ・スキルに依存しない ・温度管理(低温環境など) |
・システム障害時の品質低下 |
コスト削減 | ・省スペース化 ・人件費削減 |
・設備投資が大きい |
ここからは、主にメリットについて解説します。
生産性が上がる
人的な作業には労働時間の制約があり、休憩やミーティング・行事などによって生産は中断されます。生産性を上げようとすると過剰労働や社内活動の制限につながり、別の問題が生じるでしょう。
倉庫を自動化すると、時間的な制約がなくなります。設備の稼働率を最大限に上げられるでしょう。従業員の負担が減り、作業員の雇用の必要性も薄れます。人材配置を見直して、管理業務や新たな事業に人材を集中させることも可能です。
コストを削減できる
従業員が使用する通路や施設・設備は、自動化システムの導入により削減できます。それらが占有していたスペースを縮小することで、倉庫はコンパクトになる、または空いたスペースを新たな資源として活用できるでしょう。
また、ロボットの導入によって人手不足を補い、人件費を削減できます。スペースの削減と人件費の抑制により、物流倉庫の運用コストが下がるでしょう。
作業品質が安定化する
ピッキングや検品、カウントのミスなど、人の作業により生じるヒューマンエラーは、自動化システムを導入すると低減されます。熟練作業者がいなくても倉庫業務が成立するようになり、作業員のスキルによって品質が異なることもなくなるでしょう。
また、温度管理がシビアな商品を扱う場合、自動化によって温度の安定化や作業員の負担軽減が可能となります。総じて、倉庫作業の品質が安定化するでしょう。
物流倉庫自動化の4つの課題・対策
物流倉庫を自動化するにあたっての課題と対策を以下にまとめました。
倉庫自動化の課題・対策
課題(問題) | 対策 |
---|---|
業務フローの見直し | ・作業の標準化 ・システム化に適した倉庫内レイアウト ・部署の再編 |
導入・運用コストの見積もり | ・自動化する対象作業の明確化 ・システムとベンダーの選定 ・機能と操作性の確認 ・ROI(投資対効果)の算出 |
システムの導入・保守 | ・障害対応 ・オペレーターへのサポート体制 |
従業員への教育 | ・システムの取り扱いについてのレクチャー ・標準化された作業の体得 ・自動化の目的・意義の理解 |
ここからは、各課題を解決するポイントを解説します。
業務フローの見直し
従来の作業の中には、システムに置き換えられないものも存在します。このような作業があると、システム化のために作業を標準化しなければなりません。
自動の設備・ロボットの可動範囲や品物の流れなどは人間と同じではないため、倉庫内のレイアウトをシステムに合わせて変更する必要もあるでしょう。
また、業務・作業内容が変わると、担当部署の役割も変化します。システム化のために組織体制の刷新が求められるケースもあるでしょう。現行の業務と並行してプロジェクトを進める可能性についても検討します。
導入・運用コストの見積もり
自動化システムの導入で設備投資が大きくなると、ROI(費用対効果)の算出により導入の可否を判断する必要性が出てきます。また、運用面でもベンダーのサポートにかかる費用の妥当性を検討しなければなりません。
システム化する対象の作業を明確化し、過不足なく置き換えられるシステムと、そのベンダーを選定しましょう。システムの機能や操作性(UIとオペレーション)を確認し、求めているイメージに合致しているかを十分に確認します。
システムの導入・保守
倉庫を自動化する際、自動機械やロボット、ソフトウェアを導入します。機械のメンテナンスに加えて、更新頻度の高いソフトウェアの更新など、定期的な保守を実施する必要があります。
頻度は低いもののシステム障害が発生する可能性があり、倉庫内のあらゆる業務・作業が停止するリスクはゼロではありません。障害が発生したときの対応を決めておき、緊急時にシステムベンダーからのサポートが受けられる体制を整えておくようにしましょう。
従業員への教育
システム化により従業員の業務内容は変化します。システムの取り扱い自体を習得するだけでなく、標準化された作業を体得する、非常時の対応を把握するなどの教育が求められます。
従業員が自動化の目的や意義を理解していないと、システムの導入に懐疑的になり、教育に対してモチベーションが保てなくなる恐れもあるでしょう。なぜ自動化するのか、システムを導入すると従業員にとってどのようなメリットがあるか、などの周知徹底が重要です。
物流倉庫を自動化するシステム6選
物流倉庫を自動化するシステムには、どのようなものがあるかを具体的に解説します。自社が自動化・効率化させたい作業に合うシステムを選びましょう。
自動倉庫システム
自動倉庫システムとは、商品の入庫から保管・出庫までの一連の過程を統合管理して自動化するシステムです。
棚の形態により次のような種類の自動倉庫システムがあります。
・パレット型
・パケット型
・フリーサイズ型
・移動棚型
上からパレット単位、パケット単位、さまざまな大きさに柔軟に対応するもの、棚が移動するものです。種類はこれだけではなく、メーカーによって各種の用途に対応したシステムがあります。
自動搬送ロボット
自動搬送ロボットは商品の搬送作業を自動化するものです。搬送方法によって次のような種類のロボットがあります。
・無人搬送(AGV:Automatic Guided Vehicle)
→ 床や天井に設置された誘導体に沿って走行するもの
・自立走行搬送(AMR:Autonomous Mobile Robot)
→ センサーを使用しAI制御で自立走行するもの
・棚搬送(GTP:Goods To Person)
→ 商品を棚ごと移動して作業者に近づきピッキングを助けるもの
倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システムはWMS(Warehouse Management System)とも呼ばれ、入庫から在庫管理・出庫までの管理運営を一元化するシステムです。入出庫や在庫の他、ロケーションや進捗の管理まで一手に行い、納品書などの帳票やラベルの発行も効率的に行えます。
在庫管理システムのように在庫に特化したシステムではなく、人員管理を含む倉庫業務全般を効率化するシステムといえるでしょう。
デジタルアソートシステム(DAS)
デジタルアソートシステム(Digital Assort System)とは、デジタル表示器を使用して仕分け(アソート)を効率的に行うシステムです。
仕分けを担当する従業員は、ハンディターミナルなどの表示器の指示通りに作業をします。視覚的に状態を把握して仕分けが行えるでしょう。
デジタルピッキングシステム(DPS)
デジタルピッキングシステム(Digital Picking System)とは、デジタル表示器を使用してピッキングを効率的に行うシステムです。
作業者がバーコードリーダーで伝票から情報を読み取ると、該当する商品が保管されている棚の表示器が点灯します。これによって、商品を探す手間と時間が省略でき、ピッキング作業の効率化と迅速化が図れます。
自動ピッキングシステム
DASやDPSではピッキング作業そのものは作業者が行います。一方、自動ピッキングシステムはピッキング作業そのものを自動化します。
ロボットなどの制御機械によるピッキングであり、たとえば自動倉庫システムと連携すれば、パレット単位でのピッキングも可能です。ピッキング処理の高速化やヒューマンエラーの低減が期待できるでしょう。
物流倉庫自動化の成功例2選
物流倉庫を自動化した企業の成功例をご紹介します。
物流倉庫に自動化システムを導入
省人化目的の一例として、物流倉庫に以下の自動化システムを導入しています。
・自動搬送ロボット
・ロボットアームによるピッキングシステム
その結果、倉庫内スタッフの省人化と、重量物搬送の省力化に成功しました。作業者にとって負担の大きな作業は、ロボットを導入する効果が大きいといえます。
自動搬送ロボットが作業員の業務を代行
海外の物流倉庫では、自動搬送ロボットが導入されています。作業員が目的の商品を選択すると、ロボットが商品を棚ごと作業員のもとに搬送します。
このシステムによって作業員は移動する必要がなくなり業務負担が軽減されました。作業がシンプルになりヒューマンエラーも減少しています。
物流倉庫の自動化を成功させる2つのポイント
物流倉庫の自動化を成功させるには、自動化における課題と対策を押さえる必要があります。加えて、取り組む姿勢も重要です。これは、倉庫の自動化に限らずシステムの導入において欠かせないポイントといえるでしょう。
システムの導入目的を明確にする
物流倉庫の自動化は設備やソフトウェアにかかるコストが大きく、目的が曖昧なまま導入すると、不要な費用が膨らむことになりかねません。
また、目的が明確になっていない場合、導入効果の検証も難しくなります。
・人員の削減目標
・稼働時間の増加目標
・クレームの削減目標
上記のような導入目的はできる限り数値目標を定めて、達成度合いを数値で検証できるようにしましょう。
導入効果を検証する
システムを導入した結果、目的が達成できたか、課題がクリアできたかは必ず検証します。改善していない点があれば、次の課題として、システムの改善に活かしましょう。
最初に数値目標が設定されていれば、導入効果が明確に把握できます。
物流倉庫の自動化をアウトソーシングで実現
EC需要の増加と人材不足に対応するため、物流倉庫の自動化は急務となっています。今回の記事は、自動化のメリットやデメリット、課題、解決方法を紹介しました。
自動化システムの導入には、作業の標準化や従業員教育が必須であり、さまざまなノウハウが求められます。そのため、倉庫の自動化はノウハウのあるシステムベンダーにアウトソーシングすることがおすすめです。