倉庫保管を効率的に行う方法やシステムについて解説
物流業務において、倉庫での保管は重要な業務の1つです。倉庫の使い方や保管の仕方によって、システムの効率や扱う商品の品質が左右されます。
この記事では、倉庫保管を効率的に行う方法やポイント、自動化システムについて解説します。
目次
- 倉庫保管とは
- 営業倉庫の種類
- 普通倉庫|1類倉庫
- 普通倉庫|2類倉庫
- 普通倉庫|3類倉庫
- 普通倉庫|野積倉庫
- 普通倉庫|貯蔵槽倉庫
- 普通倉庫|危険品倉庫
- 水面倉庫
- 冷蔵倉庫
- トランクルーム
- 倉庫保管の注意点
- 商品を適切に管理する
- 入出庫を正確に把握する
- 作業効率に気を配る
- 倉庫保管を効率的に行う具体的な方法一例
- 保管スペース・レイアウトを見直す
- 設備を増強する
- 柔軟な倉庫保管を行う
- 倉庫保管を効率的に行う方法|ロケーション管理
- 固定ロケーション
- フリーロケーション
- ダブルトランザクション
- 倉庫保管を効率的に行う方法|設備の見直しや増強
- 積層ラック
- 高層ラック
- パレットラック
- 移動ラック
- プッシュバックラック
- 倉庫保管を自動化するシステム
- ポイントを押さえて倉庫保管業務を効率化
倉庫保管とは
物流における保管(倉庫保管)とは、商品や荷物を預かり、倉庫で保管することです。入庫した商品を保管して在庫管理を行い、利用者からの要求に応じて迅速に発送します。
倉庫に保管している間は、商品に損傷や不具合が生じないよう適切に管理する必要があります。在庫管理では数量のミスなく、継続して出荷供給できることがポイントといえるでしょう。
営業倉庫の種類
倉庫業で用いられる倉庫を「営業倉庫」といいます。営業倉庫は、倉庫業法第3条に基づき国土交通大臣の行う登録を受けた倉庫で、次のような種類に分類できます。
普通倉庫
・1〜3類倉庫
・野積倉庫
・貯蔵槽倉庫
・危険品倉庫
水面倉庫
冷蔵倉庫
トランクルーム
ここからは、それぞれの倉庫について解説します。
普通倉庫|1類倉庫
1類倉庫は建築基準がもっとも厳しい倉庫です。防火・耐火・防湿・防水・防鼠などのあらゆる性能を備え、10℃以下・危険物・液状・粉状のもの以外の、ほぼすべての物品に対応できます。
第1〜6類物品にあたるもの、たとえば日用品・繊維・紙、電気機械などを保管します。
普通倉庫|2類倉庫
2類倉庫は、1類倉庫から耐火性を除いた性能を持ちます。第2〜6類物品にあたるもの、たとえばでんぷん・塩・肥料・セメントなどを保管します。
普通倉庫|3類倉庫
3類倉庫は、1類倉庫から防水・防湿・遮熱・耐火・防鼠性能を除いた性能を持ちます。第3〜5類物品にあたるもの、たとえばガラスや陶磁器、原木、鉄骨などを保管する倉庫です。
普通倉庫|野積倉庫
野積倉庫は野外の倉庫で、さくや塀で囲まれ、国土交通大臣が定める防護施設のある倉庫です。
第4〜5類物品、たとえばレンガ・セメント・木材・廃タイヤの他、野外に置いても問題のない原材料などを保管できます。
普通倉庫|貯蔵槽倉庫
貯蔵槽倉庫はサイロ、タンクなどと呼ばれ、密閉・防火・防水性能を持ちます。
第1〜2類物品のうちばらで保管する物品、または第6物品を保管する倉庫です。たとえば麦類・とうもろこしなどの穀物のような液状・粉状のものが該当します。
普通倉庫|危険品倉庫
危険品倉庫は危険物保管の基準を満たした倉庫です。
周囲をさくなどで防護したうえで防犯措置を講じ、防湿・防火・防水性能を持たせています。この倉庫は消防法に適合している必要があります。
第7類物品、たとえばリチウムイオン蓄電池・高圧ガスなどを保管できます。
水面倉庫
水面倉庫は原木(第5類物品)を水面において保管する倉庫です。水面防護・流出防止の措置が取られています。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫は冷蔵設備によって保管温度を10℃以下に保てる倉庫です。第8類物品、たとえば生鮮食品、冷凍食品などを保管できます。
トランクルーム
トランクルームは家財やピアノ、文書・絵画など、個人の財産を保管する倉庫です。
国土交通省が認定したものは「認定トランクルーム」と呼ばれます。これは防塵・防虫性能などさまざまな基準を満たしているため、安心して荷物を預けられます。
倉庫保管の注意点
倉庫保管では、保管の間違いに注意が必要です。商品が正しい場所に保管され、適切にピッキングされて梱包・出荷されるように、作業や設備を管理する必要があります。
加えて、ヒューマンエラーを防ぐ作業手順の作成をはじめとした、保管ミスを防止する取り組みが重要です。
ここからは、倉庫保管に関する注意点を3つ紹介します。
商品を適切に管理する
商品を保管する際には、傷や劣化を防ぐために、適切な管理をしましょう。
たとえば、食料品や医薬品などは温度・湿度や賞味期限などの管理が重要です。長期にわたって保管している在庫の場合、経年変化による品質の変化を考慮する必要があります。
入出庫を正確に把握する
余剰在庫や在庫切れが生じないように、在庫と入出庫の状況を正確に把握しなければなりません。
在庫管理システムを使用すれば、入力された時点でのリアルタイムの在庫状況が分かります。商品ごとの入庫・出庫の必要性や時期などの一元的な管理もできます。
また、他のシステムとの連携による物流業務の最適化も可能です。
作業効率に気を配る
作業効率を上げるため、保管やピッキング作業が速やかに行える動線や、保管場所の配置に気を配りましょう。
倉庫内で扱う商品の種類や量は変化します。定期的に配置の見直しを実施して効率の悪い作業を特定し、改善を図ることが重要です。
倉庫保管を効率的に行う具体的な方法一例
倉庫保管を効率的に行うには、保管場所のレイアウトを見直してスムーズな作業ができるようにする必要があります。また、作業量を増やすための設備の見直しや増強を計画的に進める必要もあるでしょう。
倉庫保管を効率化する具体的な方法を3つ、解説します。
保管スペース・レイアウトを見直す
倉庫内の限られたスペースを有効に活用するためにも、荷物が収納されていない空きスペース(スペースロス)をなくしましょう。スペースロスには次のような種類があります。
平面ロス:荷物の置かれていないエリア
高さロス:高さ方向に積み上げきれていない場所
間欠ロス:荷物同士の隙間
それぞれに着目しつつレイアウトの見直しを行うことが重要です。
設備を増強する
レイアウトの改善により保管スペースを確保してもスペースが不足する場合は、設備を増強して、十分な容量を確保しましょう。
スペースが不足すると、本来、複数の場所に保管すべきものをまとめて管理する事態に陥ります。作業や分類に支障をきたすでしょう。
円滑な作業を可能にするための空きスペースを維持することが大切です。商品の数が増えることを見越して、保管場所にはゆとりを用意するようにしてください。
柔軟な倉庫保管を行う
保管場所には、出荷頻度の高い商品を手前に置く、大きなものは下に置くなどの考慮が必要です。保管やピッキングに要する時間を短くして効率を上げるためのレイアウトを設定しましょう。
時期によって扱う商品の種類や量が変動する場合は、定期的にレイアウトを見直したり、棚の整理を実施したりすることが重要です。
倉庫保管を効率的に行う方法|ロケーション管理
倉庫保管を効率的に行う方法には「ロケーション管理」と呼ばれるものがあります。ロケーションとは棚番号が付けられた商品の保管場所をさします。ここからは、ロケーション管理について解説します。
固定ロケーション
固定ロケーションは商品ごとに置く場所を決めて保管する方法です。
この方法を導入すると、商品が常に同じ場所に置かれるためピッキングで迷う可能性が減ります。ただし、商品の量が少ないときに無駄なスペースが増えて、多いときには収納できなくなるというデメリットがあります。結果としてレイアウト変更の必要性が生じるかもしれません。
フリーロケーション
フリーロケーションは空いている場所に商品を保管する方法です。
無駄なスペースが発生せず効率的な保管が行える点がメリットです。しかし、保管場所が随時変更されるため、人間の手による管理には限界があります。フリーロケーションを導入する際は、システムで管理を行うことが推奨されます。
フリーロケーションは、システム化さえすれば効率的な倉庫保管が行える管理方法といえるでしょう。
ダブルトランザクション
ダブルトランザクションは固定ロケーションとフリーロケーションを組み合わせた保管方法です。
ストックエリアはフリーロケーションにして無駄のない収納を行い、ピッキングエリアは固定ロケーションにしてピッキングの効率を上げます。
入出庫で異なる管理手法を適用しつつフリーロケーション管理も含まれるため、やはりシステム化が欠かせません。システムでの管理によって倉庫保管を効率化できる方法といえます。
倉庫保管を効率的に行う方法|設備の見直しや増強
倉庫保管を効率的に行うもう1つの方法として、設備の見直し・増強があげられます。たとえば、各種のラックを活用すると、荷姿に応じた効率のよい収納や取り出しが可能となります。代表的なラックの概要を解説します。
積層ラック
積層ラックは、積層棚を柱としてその上に床を設置し、中二階を構成して簡易的に増床させるラックです。
床の上下に棚を設置でき、空間を立体的に利用できます。可動式の階段や昇降機能が設けられるタイプもあります。
高層ラック
高層ラックは、小さな区切りの棚を多く積み重ねた本棚のようなラックです。
積層ラックに比べて小さな商品、たとえば小物や家電など通販の商品の保管に向いています。人が高所に上がれるようにするために「ハイピックランナー」という昇降装置が装備されます。
パレットラック
パレットラックは、荷物をパレットに乗せてフォークリフトで運搬する場合に、荷物をパレットごと棚に収納できるタイプのラックです。
棚あたりの積載荷重が500kgを超える重量物を収納でき、荷物の大きさに合わせて高さ調整が可能で、自由度が高いラックといえます。
移動ラック
移動ラックは、床に敷いたレールの上を移動するラックで、手動・電動・ハンドル式などのタイプがあります。
固定式の場合はラックごとに通路が必要であることに対し、移動ラックではラック同士を密集させ、必要な棚のみ通路を空けて荷物を取り出せます。倉庫スペースを有効に活用できますが、こまめな出し入れには不向きです。
プッシュバックラック
プッシュバックラックは、棚上の荷物を次の荷物によって押し込んで収納するタイプのラックです。
順番に荷物を押し込むと最初の荷物は一番奥に入り、手前の荷物を取り出すと後ろから自重で荷物が前に出てくる仕組みです。
倉庫保管を自動化するシステム
倉庫保管を自動化するシステムとして、コンピューター制御の「自動倉庫システム」があります。これはコンベアやクレーンが自動的に制御されて入出庫を行うシステムで、作業員を配置する必要がありません。
自動倉庫システムを導入すると、人件費の削減や稼働率の向上、スペースの活用、ミスの軽減などのメリットが期待できます。
ただし、システムを導入するための投資が高額であったり、システム障害への対応が必要になったり、荷扱いの柔軟性がなくなったりするなどのデメリットもあります。導入をするときは計画性を持ち、慎重に検討しましょう。
ポイントを押さえて倉庫保管業務を効率化
今回は倉庫保管を解説しました。倉庫内での適切な保管は作業効率を向上させます。保管方法・レイアウトは定期的に見直し、生産性の向上と保管コスト低減を図りましょう。
倉庫業務の効率化推進は、ノウハウがないと逆に効率を悪化させる恐れがあります。倉庫業務のアウトソーシングを検討しましょう。