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「自治体DX推進計画」とは|総務省による自治体DXの待ったなしのデッドラインについて解説

2023.08.21

「自治体DX推進計画」をご存じでしょうか。

近年、日本政府は自治体のDXを推進しています。自治体のDX推進計画はすでに数年前から開始され、その完了時期も決められています。

本記事で自治体DX推進計画の内容について詳しく解説いたしますので、しっかりと理解を深めてください。


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自治体DX推進計画とは

コロナ禍において、各地域・組織間で横断的なデータ活用ができなかったことは国全体にとって大きな課題として認識されました。

各自治体でも行政サービスのデジタル化に取り組む中、総務省が自治体が取り組むべき内容を具体化し足並みを揃える方針を2020年に打ち出しました。これが自治体DX推進計画です。

この計画は、自治体がDXについて重点的に取り組むべき事項や国による支援策などを取りまとめる形で策定されています。その後、2022年に「骨太の方針2022」で国が掲げた理念や支援策などを盛り込む形で改定されました。

自治体DX推進計画の内容

自治体DX推進計画の内容は以下のとおりです。

・自治体におけるDXの意義、計画の趣旨、計画の対象期間
・DXの推進体制を構築する手順
・6つの重要取組事項・デジタル社会の実現に向けた3つの取り組み

 

自治体におけるDXの推進体制の構築

6つの重要取組事項に取り組むためには、4つの体制構築の取り組みが必要とされています。

4つの体制構築の取り組みについて、詳しく見てみましょう。

組織体制の整備

まずは、組織体制の整備です。予算も時間も限られている中、本業と同時並行で計画を遂行するには効率的な組織を構築しなければなりません。
そこで、首長を中心とし、CIO(最高情報統括責任者)、CIO補佐官などのポジションを置きます。
一例として以下のように、それぞれの役職や組織によって求められる条件が異なります。

・CIO:組織マネジメントの中核となるため副首長レベルの立場の者がふさわしい
・CIO補佐官:専門的な知見が求められるため積極的な外部人材の登用が望ましい

さらに、情報政策担当部門、行政改革・法令・人事・財政担当部門、業務担当部門などの組織を整備します。
組織全体で包括的な活動が行えるよう、取り組みの前に万全の組織編制を心掛けましょう。

デジタル人材の確保・育成

社会におけるDXを推進していくために、デジタルの知見を持った人材確保が必要です。しかし一方では、各自治体では適任者の不足・不在が課題となっています。
民間企業から任用する場合は、任期付職員や特別職非常勤職員の扱いになりますが、以下の任用が許されています。

・企業での雇用契約を維持
・民間水準を考慮した給与設定

また人材を有効活用するために、都道府県や複数市町村間で外部人材を共有する仕組みについても支援が検討されています。
加えて、自治体の情報担当職員の確保や育成も課題です。各自治体には、以下のような創意工夫が求められています。

・中長期的な視点で情報担当職員の育成方針を決定する
・全職員の意識改革を行う
・IT知識のアップデートを研修に組み込む

情報担当職員の育成、全職員のIT知識の底上げにも、外部・民間からの人材登用がカギとなります。外部人材の選定は、システム導入前ではなく最初の計画段階から始めましょう。外部委託の可能性についても、積極的に検討しましょう。

計画的な取り組み

自治体DX推進計画の対象期間は、2021年1月から 2026年3月までと定められています。
さらに、自治体における行政手続きのオンライン化については2022年度末まで、情報システムの標準化・共通化については2025年度末までと目標時期も示されています。
自治体全体でこれらの目標を達成するためには、単なるシステムの構築に留まらず、関連業務を含めた業務プロセスの見直しや最適化が必要です。

以上の事項を実現するために、自治体には組織体制の構築と同時に計画の早期取り組みが求められます。各自治体がDXへ取り組むまでに至る一連の手順をまとめた「自治体DX全体手順書」を総務省が策定していますので、参考にすることをおすすめします。

都道府県による市区町村支援

社会全体におけるDXを推進するためには、自治体全体で足並みを揃えて計画に取り組むことが必要とされています。
足並みを揃えて着実な取り組みを実施するために、都道府県には以下のような役割が期待されています。

・自治体DX推進計画に関して内容説明・助言・支援を行う
・各市町村における外部人材ニーズを把握・調整する
・外部人材を各市町村で有効活用するための兼務を主導する
・データの共同利用やデジタル技術・機材の共同購入を主導する

6つの重要取組事項

自治体DX推進における6つの重要取組事項を、以下の表で紹介します。

 

重要取組事項 具体的な内容
自治体における情報システムの標準化・共通化 ・地域公共団体における情報システムの標準化
・標準化基準における共通事項の策定
・制度所管府省庁による標準化基準の策定など
マイナンバーカードの普及促進 マイナンバーカードの普及推進・利活用拡大に向けた取り組み
自治体における行政手続きのオンライン化 マイナポータルの活用を前提としたオンライン化の推進
自治体におけるAI・RPAの利用推進 AIとは人工知能、RPAとは業務自動化システムのこと。
総務省が策定した「AI・RPA 導入ガイドブック」を参考にAI・RPAの導入・活用を推進
テレワークの推進 総務省が策定した「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」や「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を参考にテレワーク対象業務の拡大
セキュリティ対策の徹底 2022年10月に、「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準」が策定された。これに基づきガバメントクラウドの利用に向けて、情報セキュリティ対策を徹底

ご存じのようにすでにある程度実現されているものから、取り組みが始まったばかりのものまで、その推進状況はさまざまです。

自治体DXとあわせて取り組むべき3項目

自治体DX推進計画では前章で挙げた6項目以外に、地方自治体が取り組むべき項目が3つ挙げられています。

デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取り組みの推進・地域社会のデジタル化

2022年6月に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想基本方針」において、以下の通りです。

・政府のデジタル田園都市国家構想が目指す方向性と目標を示す
・データ連携基盤の構築などを積極的に推進する
・地方の自主的、主体的な取り組みを支援する

さらに地方自治体が取り組むべき具体的な施策として、以下のような例が具体的に挙げられています。

・デジタル技術による住民サービスの提供や街づくりに向けてのデザイン
・光ファイバーの全国的な展開や5Gサービスの開始
・ローカル5Gの導入など情報通信基盤の整備の推進

これらを実現するため、2021・2022年度の地方財政計画に各年度 2,000億円の「地域デジタル社会推進費」を計上し、地域社会のデジタル化費用に充てています。

デジタルデバイド対策

政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を3年連続で閣議決定しており、その基本方針の1つとして「誰一人取り残されないデジタル社会」を掲げています。
この計画は、デジタル社会の形成のために政府が、迅速かつ重点的に実施すべき施策について定めたものです。
具体的な施策としては、以下のような内容が含まれています。

・マイナンバーカードの普及と利用の推進
・健康・医療・介護などの準公共分野のデジタル化の推進
・「デジタル推進委員」を全国に展開

デジタル原則に基づく条例等の規制の点検・見直し

政府は、規制改革・デジタル改革・行政改革などの構造改革を推進するため、2021年に内閣総理大臣を会長とした「デジタル臨時行政調査会」を創設しました。
この調査会では、4万以上の法令などを対象にアナログ規制の横断的な見直し、3年間で制度や規制整備の実現を目指します。
アナログ規制とは人の手で、あるいは対面で行うことを法律で定められた規制や講習などを指します。
デジタル化を阻むこれらのアナログ規制を見直すことで、生産性の向上だけでなく新たな産業の創出も期待されています。

自治体DX推進計画の対象期間

自治体DX推進計画の期間は、前述の通り2021年1月〜2026年3月までと定められています。2023年7月時点で既に実施期間に入っており、期間の折り返しも間近です。

対象期間の終了までに、明確な実績が求められます。

「2025年の崖」について

国が期限を切ってまで、自治体のDXを推進するのはなぜでしょうか。それを理解するために、「2025年の崖」について解説いたします。
「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が作成した「DXレポート」で提唱された言葉です。
日本企業がDXを十分に行わなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる危険性を示唆しています。

2025年の崖を乗り越えるために、地方自治体が先駆けてDXすることが求められています。

出典:経済産業省「D X レポート (サマリー)

自治体DXの事例

国の方針としてだけではなく、地方自治体を取り巻く状況的にもDXが求められる中、既にDXで一定の成果をあげている地方自治体もあります。

それぞれの自治体が実施するDXについて事例を3つご紹介します。

愛媛県・市町DX協働宣言

愛媛県では、2021年に県と市町が協働してDX推進を宣言しました。協働宣言には以下の目的があります。
・住民本位の視点から県と市町が協力して誰ひとり取り残さない地域社会のDXに取り組むこと
・産学官と協働しながら地域住民の暮らし向上促進を目指すこと

目的を達成するために、デジタルリテラシーの向上と高度デジタル人材のシェアリングなどに取り組んでいます。

さらに、外部コーディネーターも採用して、DX支援やデジタル人材の育成にも力を入れています。

出典:
総務省「知事と全市町の⾸⻑による「愛媛県・市町DX協働宣⾔」にもとづき
愛媛県「愛媛県・市町DX協働宣言について
愛媛県デジタルシフト推進課「県と市町の連携による 「チーム愛媛」のDX推進

宮崎県都城市・外部専⾨⼈材をDXアドバイザーとして登⽤

宮崎県都城市では、デジタル総括本部を設置した上で、外部からDXアドバイザーを登用しています。
さらに、デジタル統括課に土木技師を配置し、土木産業分野のDX推進強化に努めています。土木産業は、DXの推進が難しいと言われています。しかし、あえて積極的に土木関係のデジタル化体制を強化することで、公共工事の確認にアプリを導入できました。
面積が広い都城市では、建設作業で現場確認をする際にかかる移動時間が非効率であり、課題でした。アプリを導入することによって、オンラインで作業が完結できるようになり、移動時間が大幅に削減できたのです。
また、都城市では、全国に先駆けて避難所のWeb管理にも取り組んでいます。

出典:総務省6 市長をCDO、外部デジタル人材をDXアドバイザー等としたDX推進体制【宮崎県都城市】

奈良県三宅町・複業⼈材を多数採⽤

奈良県三宅町では、民間から4か月間の任期でアドバイザーを登用するという集中的な取り組みを実施しています。
アドバイザーは民間から募集し、オンラインで参加することも可能です。プロジェクト終了後も、アドバイザーがそのまま委託契約に発展するケースもあり、人材活用に柔軟に対応しています。
さらに、十分な先行事例がない中、行政での実証実験という形を取ることで町役場でWeb会議システムの迅速な導入を実現しています。

出典:総務省「5 民間事業者との包括連携協定に基づく複業人材の活用【奈良県三宅町】

まとめ

本記事では、自治体DX推進計画の内容や、各自治体の取り組み事例についてを取り上げました。

社会全体におけるDX推進は、業務効率化だけではなく、住民の暮らしをより快適にする効果があります。具体例を挙げた3つの自治体の他にも、自治体DXを推進するプロジェクトがますます活発化しています。

2026年3月までが、自治体DX推進計画の対象期間です。万が一計画に遅れを感じているなら、積極的な外部委託をご検討ください。


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