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包括連携協定とは|一定の分野の問題解決を目指す官民協力の協定

2023.08.21

地域課題の解決を目指し、自治体と民間企業が協力する包括連携協定を取り入れている自治体は多くあります。

本記事は、自治体に関わる方に向けて包括連携協定のメリットや成功させるためのポイントについて解説します。


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包括連携協定とは

包括連携協定は、ある地域が抱える問題に対し、自治体と民間企業が連携して解決を目指す協定です。

地域が抱える問題は、福祉・防災・地域振興など、さまざまな分野にわたります。この問題を解決するために、自治体と民間企業がそれぞれ持っているノウハウや特色を活用しなければなりません。

包括連携協定を結ぶことで、専門知識・技術をもつ民間企業が自治体と連携できるようになり、新たな行政サービスを展開できます。

包括連携と個別連携の違い

ある問題に関して、さらに特定の項目の解決を目指す連携が個別連携、問題全体の解決を目指す連携が包括連携です。

例えば、その自治体全体の環境保全に関する連携は包括連携に含まれます。一方で、自治体内にある特定の地域のみの環境保全に関する連携は、個別連携にあたります。
また、自治体によっては、担当課窓口が単独である連携を個別連携、担当課窓口が複数ある連携を包括連携と呼称しているところもあります。

いずれにせよ、広い視点で自治体全体が抱える問題を解決しようとするものが、包括連携であるといえるでしょう。

包括連携協定が生まれた3つの理由

包括連携協定は、以下の3つの理由により生まれました。

1.地方自治体での人員不足
2.自然災害の発生
3.地方自治体のDX

いずれも、「自治体だけでは補えない業務を行うため」という考えが根底にあります。

地方自治体での人員不足

財源不足と少子高齢化による人員不足は、今まさに地方自治体が直面している問題であり、今後も取り組んでいかねばならない可能性が高いと思われます。

少子高齢化により、そもそも労働人口は減少しています。加えて、財源不足で更なる人員削減を余儀なくされ、行政サービスにかけられる人員が減少しています。そのため、行政だけで多くの問題を解決することは難しい状況です。

この状況を打破するために生まれたのが包括連携であり、自治体と民間企業との連携で行政業務の効率化を目指しています。ノウハウをもつ民間企業と連携すれば、少ない人員でもスムーズに地域課題へ取り組める可能性があります。

自然災害の発生

自然災害の多発も、包括連携協定が広がったきっかけの1つです。

災害発生時は、速やかな対応で人々の生命・安全を確保する必要があります。ただし、自治体のみで行える対応には限界があります。災害時には救援物資の分配や災害情報の提供も必要です。これらの技術・経験を求めて、民間企業との協定が生まれました。

被災者の食料提供・避難所としての活用を目的とした、スーパーマーケットとの協定が行われているのは、その一例です。

地方自治体のDX

自治体のDXは、デジタル化による行政業務の効率化や住民の利便性向上を目指す取り組みです。

政府が掲げる自治体DX推進計画は2026年3月までと締切が設定されており、DXは多くの地方自治体にとって急務となっています。

ITやICTに必要な人材・経験は多くの自治体で明らかに不足しており、民間企業の協力が強く求められています。

自治体情報システムや行政手続きにおけるデジタル化のほか、デジタル技術を活用した働き方改革の推進などが挙げられるでしょう。

>>随意契約をわかりやすく解説!意味や条件など

包括連携協定のメリット

包括連携協定には、どのようなメリットがあるでしょうか。
自治体側のメリットをメインに、包括連携協定におけるメリットを3つご紹介します。

行政サービスを充実させられる

包括連携協定によって、住民のニーズに合ったサービスの提供が可能です。

民間企業は自治体が持っていない顧客のニーズに関わる情報を保持しており、自治体単体では気付けなかった課題を発見できる可能性があります。

その結果、行政で見いだせなかった、あるいは不可能であった新しいサービスを生み出せるでしょう。

業務効率化・財政支出を削減できる

包括連携協定を活用すれば、業務の効率化や財政支出の削減ができます。

例えば、行政サービスの一部を運営方法まで含めて民間企業に委託することで、組織をスリム化して人件費の圧縮が可能になるでしょう。電力会社と包括連携協定を締結することで、電力の価格を引き下げている自治体もあります。

ノウハウを持つ企業がサービスの一部を担うことで、業務の効率化を実現しつつ、行政の財政負担を減らした上で、課題解決に取り組める体制を整備できます。

企業側にもメリットがある

包括連携協定は、自治体側だけでなく企業側にもメリットがあります。
企業側のメリットは主に以下の2点です。

1.地域におけるブランドイメージの向上。地域の課題に取り組む企業として住民に認知されるようになり、信頼関係の構築や売上の向上にもつながります。

2.新規サービスが生まれる可能性があります。包括連携協定では、地域課題を解決するためのサービス開発に取り組みます。住民のニーズに着目できるため、企業にとっても新規サービスの開発につながります。

包括連携協定における注意点

包括連携協定を締結しても、十分な実績を挙げられないケースがあります。
ここからは、包括連携協定を締結する際に注意する点をご紹介します。

実績が見えにくい分野がある

地域課題によっては、実績の見えやすい分野と見えにくい分野があります。

例えば、売上や地域への来訪者数などの数字で成果を判断できれば、実績が分かりやすい分野といえます。もし成果を上げられなかったとしても、データを分析して改善策を考案できるでしょう。

一方、数字による成果の判断が困難な分野は実績が見えにくいといえます。環境保全、子育て補助、災害対策や地域の安全性の向上などが、数値化が困難な分野の一例です。

取り組む内容を決める際は、実績をどのように判断するかという企業との協議が欠かせません。

自治体と企業間に意識のずれがある

自治体と民間企業では、包括連携に対する意識にずれがある場合があります。

自治体は民間企業に過剰な期待をかけ、民間企業は自治体のニーズを汲み取れない、あるいは汲み取ろうとしても出てこないなどで包括連携が実際の取り組みまで進まないといったケースが実際に起こっています。

包括連携を成功させるには自治体・企業両方で組織内の理解が必要ですが、包括連携自体がまだ新しい概念である、現場レベルの連携は取れていてもトップの理解と支援が不足する、利益面でのメリットが低い場合は企業側の優先順位が低くなるなどの要因が妨げになってしまうのです。

自治体と企業が共に明確なビジョンのないまま、包括連携を結んだとしても効果が発揮される可能性は低いでしょう。

イメージ悪化のリスクがある

包括連携協定により課題の解決がうまくいかなかった際に、特に企業側はイメージが悪化するリスクを抱えています。

イメージの悪化を防ぐためには、さまざまなリスクの想定と問題への速やかな対策が重要です。包括連携協定の締結時に、リスク管理ができるような体制を整えておきましょう。

>>地方自治体・行政が民間企業へ業務を依頼する方法

包括連携を成功させるポイント

包括連携協定は、ポイントを押さえることで、成功しやすくなります。ここでは、包括連携協定を成功させるためのポイントを3つご紹介します。

具体性のある協定書

包括連携協定は、具体性のある協定書を作成すると成功しやすくなります。具体性があれば、自治体と民間企業間にある意識のずれも減らせます。
協定書には、以下の内容を入れるとよいでしょう。

・実施する行政サービスの場所やタイミング
・サービスの準備段階から終了までのスケジュール
・予算、企業負担や公的資金の活用の有無

より具体性のある内容にすると、自治体が担う役割と企業側の担う役割が明確にでき、スムーズに包括連携を進められます。

自治体の総合計画とリンクさせる

総合計画は行政運営における最も基本となる計画で、自治体の目標や施策が示されています。
住民・企業・行政それぞれに対し、総合計画に沿った行動が望まれています。

包括連携を総合計画にリンクさせることで、ひとつの方針に沿わせられるでしょう。地域課題の解決のために効果のある事業への展開が可能です。それにより、企業の力を活用しやすくなります。

民間企業にとって最低限の収益を確保する

民間企業にとって最低限の収益を確保することは重要です。
包括連携は収益性が低くなりやすいため、収益を確保できていないと、民間企業の負担が大きくなります。そのままでは、包括連携に前向きな姿勢を維持することが困難になる可能性があります。

・包括連携で扱う事業に関連のある企業の商品を公的機関に設置する
・行政で民間企業のPR活動を実施する

上記の方法で、企業の知名度や売上の向上につながる施策を取り入れるとよいでしょう。

まとめ

包括連携協定は、自治体と民間企業が協働して地域課題の解決を目指すものです。人手不足に対応するために、多くの自治体で包括連携協定が取り入れられています。

包括連携協定が成功すれば効率よく地域課題を解決に導ける上、企業のイメージや売上の向上も望めます。

包括連携協定を成功させるためには、具体性のある協定書や総合計画とのリンクなど、ポイントを押さえた取り組みが重要です。
今回の記事を、ぜひ包括連携協定への取り組みにお役立てください。


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