プレミアム商品券とは?仕組みや問題点等を解説
近年、プレミアム商品券の発行がニュースで大きく取り上げられ、広く話題になりました。今回の記事では、プレミアム商品券の仕組みや問題点など、知っておきたい内容について、詳しく解説します。
目次
- プレミアム商品券とは
- プレミアム商品券の仕組み
- プレミアム商品券を発行する目的
- プレミアム商品券の種類
- 紙商品券|誰でも使いやすい
- 電子商品券|発行にかかる経費を抑えられる
- プレミアム商品券を発行するメリット
- 利用者がお得に買い物できる
- 地域経済の活性化が見込める
- 衛生的に決済が行える
- プレミアム商品券の問題点
- 紙で発行する場合は印刷にコストがかかる
- 不正利用を防止する仕組みが必要になる
- 利用を促すための告知が必要になる
- プレミアム商品券を導入する際に意識したいポイント
- 運用に必要な人員やコストを把握しておく
- シニア世代でも使いやすいようにする
- 参加店舗が対応しやすい仕組みにする
- 手続き業務を簡易化・効率化する
- プレミアム商品券を導入する流れ
- 紙商品券の場合
- 電子商品券の場合
- まとめ
プレミアム商品券とは
プレミアム商品券とは、購入金額に対して、金銭的価値が何割か加算された商品券のことです。地方自治体が発行しており、指定されたエリアや店舗で利用できます。
例えば、3割のプレミアムがつく商品券を10,000円で販売した場合、消費者は一口10,000円で購入すると13,000円分の買い物が可能です。利用者は、3,000円分をお得に買い物ができるという仕組みとなります。地域に暮らす人々の消費を支えるとともに、地域経済の活性化が期待できます。
プレミアム商品券の仕組み
プレミアム商品券は、地方自治体がプレミアム率を定めて、上乗せ分を国が負担します。プレミアム商品券の期限や世帯あたりの購入限度額、購入方法、購入できる世帯などは、地方自治体が決定します。
プレミアム商品券を使える店舗は、自治体の募集要項に応募して登録された店舗です。購入者は、登録された店舗のもとでプレミアム商品券を使い、店舗で商品やサービスをお得に購入できます。店舗はプレミアム商品券の加盟店になることで、集客効果を期待できます。このように、購入者にとっても店舗にとっても、双方に利益のある仕組みとなっています。
プレミアム商品券を発行する目的
プレミアム商品券は、地域経済を支えることが目的で発行されてきました。
2019年以降、消費税増税や新型コロナウイルス感染症拡大の影響による景気の悪化などで人々の財布の紐が固くなってしまい、経営に行き詰まる店舗が増えていました。そうなると、人々の暮らしにも悪影響が生じてしまいます。そのような状態を打開するために発行されたものが、プレミアム商品券です。
プレミアム商品券は、使える期間が限定されているため、早い段階で経済効果が期待できます。さらに、プレミアム商品券をきっかけに店舗の魅力が伝わると、継続的な地域活性化につながることも期待できます。プレミアム商品券は、これらの観点から地域経済を支えるために発行されています。
プレミアム商品券の種類
プレミアム商品券は、紙商品券と電子商品券の2種類に分けられます。
この章では、それぞれの種類の特徴についてご紹介します。
紙商品券|誰でも使いやすい
紙商品券は、紙に印刷されたプレミアム商品券のことです。現金感覚で誰でも簡単に利用でき、多くの自治体で採用されました。
紙商品券のメリットは、スマートフォンがなくても利用できる点です。スマートフォンを持っていない、操作が分からないという人も、プレミアム商品券を利用できます。
さらに、店舗も読み取り機械の導入が不要なため、多くの店舗で対応することが可能です。小規模店舗でも、プレミアム商品券の恩恵を受けられます。このように紙商品券は、幅広い層が使える点に大きなメリットがあります。
電子商品券|発行にかかる経費を抑えられる
電子商品券は、電子データを利用したプレミアム商品券のことです。紙の商品券に比べて発行にかかる経費が抑えられるため、最近では電子商品券を導入する自治体が増えています。
電子商品券は容易にコピーしたり、偽造したりすることが難しいため、不正利用を防止できるという点が大きなメリットといえます。また、利用状況などのデータを収集・利用しやすいため、地域経済の分析にも役立てられます。
プレミアム商品券を発行するメリット
プレミアム商品券を発行するメリットは、大きく3つあります。
この章では、主なメリットについて詳しくご紹介します。
利用者がお得に買い物できる
プレミアム商品券は、利用者がプレミアム分の金額だけお得に買い物をできるメリットがあります。利用者は普段よりも多く、より高価格帯の商品のお買い物も楽しめます。また、現金やクレジットカードの利用ではないため、ポイントは付かないことがほとんどですが、還元率に換算すると、多くの場合ポイントカードよりもお得といえるでしょう。
さらにプレミアム商品券の利用者は、自治体に住民登録をしている人が中心のため、自治体にとっては住民の生活支援につなげられることもメリットの一つです。プレミアム商品券の購入者を低所得世帯や子育て世帯に限定すれば、特定の世帯を支援できます。
地域経済の活性化が見込める
プレミアム商品券は使える地域や店を限定することで、地域経済の活性化が期待できます。普段はインターネットや他の地域で買い物している人の消費を取り込むことで、地元の店舗が元気を取り戻すきっかけになるでしょう。
さらに、自治体次第では商品券の利用を中小店舗に限定して、地域の経営者をサポートする動きもみられます。地域経済が活性化すると、税収や雇用が確保されてよりよい住民サービスを目指せます。働く場所が増えるということは、人口減少対策にもつながるため、自治体にとっても大きなメリットです。
衛生的に決済が行える
プレミアム商品券を使うと、現金よりも衛生的に決済が行えます。
昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、紙幣や硬貨を介してのやり取りに抵抗感を覚える人が増加しました。誰が触ったのか分からない現金と比較すると、プレミアム商品券は紙商品券としては、触る人が限定されています。
さらに、電子商品券は接触を避けて決済ができるため、非常に衛生的といえるでしょう。
国は感染拡大防止の観点から衛生的な決済を推奨しており、自治体の発行するプレミアム商品券の電子化が加速しています。
プレミアム商品券の問題点
プレミアム商品券には、メリットも多い反面、いくつかの問題点も指摘されています。
この章では、具体的な問題点を3つ紹介します。
紙で発行する場合は印刷にコストがかかる
紙商品券の場合は、印刷に多くの費用がかかります。印刷代は発行元が支払うことになるため、自治体にとっては大きな負担となります。
また、完売することなく、印刷費用だけがかかるケースもあります。紙の商品券を発行する際には、発行枚数をよく考えるなど、印刷費用を抑えるための取り組みも重要です。
不正利用を防止する仕組みが必要になる
プレミアム商品券を偽造した事件は多く、自治体には不正利用を防止する取り組みが求められます。実際に、偽造防止加工をしていないプレミアム商品券は簡単にコピーできてしまったため、地域経済に悪影響を与えました。
具体的な不正防止策としては、セキュリティホログラムやコピーガードを施す、電子商品券を利用するなどが挙げられます。特に、電子商品券はシステムで管理されているため、不正利用への対策がしやすくなります。
利用を促すための告知が必要になる
プレミアム商品券は、利用を促すための告知に人員や費用がかかります。人手の少ない自治体にとっては、大きな負担となる可能性があります。
告知の方法は、インターネットに掲載したり、人の集まる場所に告知チラシを設置したりと多岐にわたります。告知が不十分だと、売れ残ってしまうリスクも高まります。
解決方法として、告知のサポートを専門とする会社に依頼する方法が考えられますが、依頼費用が必要になります。効果的な告知をするためにはどのようにするとよいのか、担当部署で話し合うことが重要です。
プレミアム商品券を導入する際に意識したいポイント
プレミアム商品券を導入する際は、問題点を踏まえてさまざまな対策を取ることが重要です。この章では、導入する際に意識したいポイントを4つ紹介します。
運用に必要な人員やコストを把握しておく
プレミアム商品券を導入する前に、運用に必要な人員や費用について確認しましょう。
人員や費用は、プレミアム商品券の発行枚数や、利用可能な店舗数などの規模次第で左右されます。まずは「どのような内容の商品券を配布するのか」「誰を対象にするのか」について、担当者間で話し合うとよいでしょう。
また、事業を委託する場合にも、委託業者との綿密な打ち合わせが求められます。自治体の担当者は、過去の事例や周辺の地方自治体の例を参考にしながら、スムーズな運用ができるように必要な人数を計算しておく必要があります。
シニア世代でも使いやすいようにする
プレミアム商品券は、シニア世代をはじめ多くの層が使えるような工夫をしましょう。
電子商品券の導入も増えてきましたが、紙商品券も同時に発行する自治体が大半です。その他にも商品券の文字を大きめにしたり、シニア世代が多く利用する店舗でも利用できるようにすることで、シニア世代にも効果が期待できます。
少子高齢化が進行している現在では、シニア世代の消費が地域経済に大きな影響を与えます。シニア世代の使用を想定したプレミアム商品券をつくることは、地域経済活性化の鍵を握ります。
参加店舗が対応しやすい仕組みにする
プレミアム商品券に参加した店舗の負担が多くなると、次回以降のプレミアム商品券事業に参加してもらえない可能性があります。
店舗が対応しやすいように、店舗がすぐにプレミアム商品券を換金できるようにしたり、電子商品券の読み取りに必要な機材を無償で貸与したりする仕組みが求められます。参加店舗の声を聞き必要なサポートを行うことで、参加店舗が増えて、利用者にとっても利便性が高くなることが期待できます。
手続き業務を簡易化・効率化する
プレミアム商品券に必要な手続きは、簡易化・効率化することが重要です。
手続き業務が複雑になると、ミスが多くなったり、作業効率が悪くなったりします。手作業で行っている業務があれば、デジタル化できる部分がないか見直しが求められます。
例えば、データ集計を自動化するだけで、業務を大幅に効率化できます。集計にかかっていた時間・費用を削減できるうえ、ヒューマンエラーも少なくなるでしょう。電子商品券が解決できる問題も多いため、業務のデジタル化を検討することをおすすめします。
プレミアム商品券を導入する流れ
この章では、プレミアム商品券を導入する流れについて紹介します。プレミアム商品券の導入が決まったものの、手順が分からない場合には、こちらを参考にしてください。
紙商品券の場合
紙商品券の場合は、まず印刷会社に商品券の印刷を依頼します。このとき、デザインだけでなく、不正利用防止の取り組みについても印刷会社とよく話し合っておくことが重要です。同時進行で加盟店店舗を募集して、換金手続きをどのようにするかを決めておくと、以降の流れがスムーズに進みます。
その後、プレミアム商品券について告知して、対象店舗や使用期間などを周知します。流通までには、多くの人が認知している状態をつくることが重要です。
購入者に紙商品券を受け渡すと、紙商品券が流通し始めます。最後に、決めておいた換金方法で店舗に対応しつつ、次回以降に向けてデータの集計・利用をしましょう。
電子商品券の場合
電子商品券の場合は、スマートフォンのアプリで利用するのか、電子カードにするのかなど、サービスの詳細を決定します。電子商品券の発行には、さまざまな業者がプランを用意しているため、比較検討して自治体の年齢層に適した利用方法を選ぶことが重要です。
電子商品券の利用方法を決めたあとは、参加店舗に決済方法を説明して、必要に応じて決済用の機器を貸与したり、決済方法を説明したりします。その後、利用者にも使用方法を告知して発行します。電子商品券の場合、自動でデータを収集できるため、その後の分析・利用がしやすくなります。
まとめ
プレミアム商品券を利用する取り組みは、多くの自治体で実施されています。利用者にも店舗にもメリットの多いプレミアム商品券ですが、印刷に多くの費用がかかったり、不正利用の可能性があるなど、さまざまな問題点もあります。
紙商品券と電子商品券のメリット・デメリットを踏まえながら、地域住民が使いやすい仕組みをつくることが重要です。地域における消費を支えて活性化を図るために、プレミアム商品券を利用しましょう。