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地方自治体・行政が民間企業へ業務を依頼する方法|業務委託や指定管理者制度等を解説

2023.05.29

近年、地方自治体・行政が民間企業へ業務を依頼する事例についてよく耳にするようになりました。2014年に政府が「地方創生」を掲げてからは、多くの成功事例が報告されています。

この記事では地方自治体・行政が民間企業へ依頼する場合、どのような方法があるのかをご紹介いたします。


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地方自治体・行政が民間企業へ依頼する重要性

民間企業に依頼して、依頼先の得意分野を生かした業務を任せることで、行政が直接行うよりも業務の効率化に期待できます。

民間企業へ業務を依頼する目的は主に下記の2つです。

1.コストの削減

2.人手不足の解消

新たに人材を採用・育成する時間が不要になるため、コストの削減が期待できます。また、超少子高齢化社会に直面する現在の日本は、どの業界も人材不足が課題となっています。特に地方自治体ではその問題が深刻なケースもあり、解決策として行政の枠を超えた連携について試みる自治体もあります。

地方自治体・行政が民間企業へ依頼する方法

民間企業に依頼するには、どのような方法があるのでしょうか。いくつか依頼方法があるため、それぞれのメリット・デメリットと特徴について説明します。

業務委託

業務委託は最も一般的な依頼方法で、民間企業同士でもよく行われています。

自治体の業務は大きく3種類に分類されます。

1.工事:建設・土木など

2.物品:自治体で使用するものを買う

3.役務:幅広いソフト事業やサービスの代行を依頼する

自治体から民間企業に依頼する方法では、主に業務委託で「役務」の仕事を依頼しています。後述する「指定管理者制度」とは、自治体の仕様通りに業務を行ってもらうという点で異なります。
業務委託は、意思決定までは任せず、業務のみを委託業者に依頼します。

メリット

・運営コストを削減できる。

・民間企業の専門分野を任せることでサービスの品質向上につながる。

・繫忙時や突発業務の発生時に各部署の連携が取りやすくなる。

デメリット

・プライバシー情報について、漏洩する可能性がある。

・想定していた効果が発揮されないこともある。

指定管理者制度

指定管理者制度とは、民間企業やNPOが「公の施設を自治体の代わりに管理運営する制度」です。平成15年の地方自治法改正までこの役割は公の団体や、地方自治体が出資した法人のみに限定されていました。

法改正後は自治体が指定する「指定管理者」が管理できるようになり、民間企業も参入するようになりました。個人への依頼はできませんが、法人格がない団体へも依頼は可能です。

施設のルール・サービス内容は自治体が定める条件のなかで企業が決める一方、指定管理者制度とは、業務委託よりも受託側が裁量権を大きく持つことが特徴です。民間企業の強みを活かした運営で、工夫次第で市民へ満足度の高いサービスを提供できます。

メリット

・運営コストを削減できる。

・きめ細かなサービスを提供できる。

デメリット

・指定管理者が数年で撤退した場合、施設運営の持続性と市民の安心感が損なわれる。

・委託企業の方針で雇い止めが起きることもある。

・長期的な人材育成とノウハウの蓄積が難しい。

PFI

PFIは、「Private Finance Initiative」の略で、公共施設の建設・維持管理・運営に民間の資金やノウハウを活用するという意味の言葉です。1992年にイギリスで生まれた取り組みで、日本では1999年にPFI法が制定されて導入がスタートしました。

PFIでは、民間企業が主体となって公共サービスを提供することが特徴です。それまでは、公共施設の運営主体は官公庁でしたが、PFI法の制定以降は設計から運営までの一貫した業務を民間企業に任せられるようになりました。専門家に業務を任せることで、地方自治体や行政が直接実施するよりも、より質の高いサービスを提供する目的があります。

メリット

・公の団体が直接行うよりも効率的・効果的なサービスを提供できる。

・地方自治体や行政の運営コストを削減できる。

デメリット

・行政が依頼先の民間団体の管理や指導をしなければならない。

・委託企業の選定にあたって、手続きや業務が増加しやすい。

包括連携協定

包括連携協定は、地域の課題を自治体と民間企業とが分野を限定せずに協力して解決を目指す協定です。

「協定」とは協議して決めることや継続的・安定的な関係を結ぶという意味があります。予算や仕様が全て自治体に決められてから募集される、通常の案件とは異なります。

政策決定の段階から民間企業が関わることで、隠された課題の発見やコスト削減にもつながるのです。しかし、協定書の内容が曖昧なことや契約締結前にお互いの方向性のすり合わせができておらず、意思疎通がうまくいかないというケースも少なくありません。

成功させるためには、自治体の総合計画に沿った内容で依頼を出して、具体的な行動計画までを事前に決めておくことが重要です。

メリット

複数分野の運営を同時に推進できる。

・住民の要望に沿ったサービスを提供できる。

・さまざまな企業・公的機関との共同事業が行える。

デメリット

・自治体と企業との認識が異なる場合もある。

・民間企業にとって利益が出しづらい。

官民連携提案制度

官民連携提案制度は、民間からの提案を受け付けるための窓口を設置して、その提案について事業化する工程を制度として確立したものです。

以前は自治体の各部署がそれぞれで事業提案を受け付けていました。そのため、民間企業からは担当窓口が分かりづらいという課題がありました。この制度が確立してからは、自治体側は民間企業からの提案を積極的に受け入れる体制をとれるようになりました。

メリット

・地域課題解決の窓口が明確になる。

・自治体と民間企業との事業連携がしやすくなる。

デメリット

・提案を受けてから実施までに時間がかかる。

・期待した効果を得られない場合がある。

>>包括連携協定とは

民間企業へ依頼する手順

近年、自治体は特定の大手企業だけでなく、幅広い企業へ業務を発注するようになりました。自治体の予算は国民の税金が母体となるため、予算を有効活用する目的で、公平性・不透明性を重視した「入札方式」を採用しています。

入札にはいくつか手順があり、細かなルールは自治体ごとに異なりますが、一般的な手順は以下のようになります。

STEP1.企業を募る

応募資格は、事前にエントリー手続きを行った「競争入札参加資格」を持つ企業のみとなります。書類審査等を経て、問題ないと判断された企業は等級が与えられます。「入札参加資格者名簿」に掲載されて参加資格を得ます。

方法①自治体の公式ページ内で公募を行う

各自治体の公式ページ内に情報を掲載して、公募を行います。自治体の公募は、入札・契約関係のページに掲載されていることが一般的です。前述の事前エントリー手続きを行い、さらに募集内容の条件を満たしていれば実績のない企業でも応募することが可能です。

方法②数社を指名する

公募とは異なり、自治体から企業を指名する方法が「指名競争入札」と呼ばれるケースです。発注情報は非公開で、選ばれた企業の中から入札を行い落札した企業に仕事を依頼します。

近年では公平性を保つため、指名は減りつつあります。小規模の案件・不誠実な業者の参加を避けたい場合・依頼内容が公募に適さない特種な内容の場合など、限定的に行われています。

STEP2.選考を行う

参加企業が集まると次は選定に移ります。入札方法にもいくつかあるため、ご説明いたします。自治体は、予算や解決したい課題の内容ごとに、適した選考方法を選ぶことが重要です。

方法①価格競争入札

入札時に最も低い価格を提示した民間企業が落札者となる入札方法です。この方法は自治体との事業連携が少ない企業の実績づくりになります。

一方で企業側には、利益があまり出ないというデメリットをもちます。また、落札の優先基準が「最低価格」であるため、業務の質が低下する恐れもあります。希望通りの業務が遂行されない可能性があるため、業務内容に応じて適切な依頼方法を選ぶ必要があります。

方法②企画競争入札

企画競争入札は、プロポーザル方式とも呼ばれる方法で、近年この選定方法が増加傾向にあります。企業の企画内容と提示契約金額の両方で総合的に判断します。価格競争入札のように判断材料が金額のみではないため、企業にとっては利益を出しやすいことがメリットです。

また、自治体は「質の低い業者が低価格で落札すること」を回避できます。民間企業同士の取引とは違い、具体的な評価項目と評価点が設定していることも特徴です。

方法③総合評価落札方式

総合評価落札方式は、企業の企画内容を確認したうえで、数社に依頼対象を絞り、価格競争入札をして最も安い金額で落札した企業に決定する方法です。

企画競争入札と「総合的に判断する」という点では類似していますが、全く異なる選定方法です。2つの入札方法はともに企画内容が判断材料になりますが、総合評価落札方式はさらに価格の安さも重視します。

契約相手と条件を決めるため、決定後に内容の変更はできません。一方で、企画競争入札では決定後も交渉の余地があり、場合によっては契約内容の変更も可能です。

随意契約の場合は手順が省かれる

随意契約は企業の提案に基づく選定方法と異なり、「任意で民間企業を選ぶ方法」です。自治体にとっては公平性が不透明というリスクがあるものの、選定の手間を省けるというメリットもあります。民間企業にとっては過去の実績や自治体からの信頼度を使って、選考無しで案件を受注できるため、多くの民間企業が目標としている契約方法といえます。

自治体が民間企業へ委託する際のよくある質問

民間企業へいざ業務委託を行うことになった際に気を付けるべきポイントについてご説明いたします。民間企業の力を借りて地域課題の解決を図るために、ぜひ知っておきたい内容です。

法人と個人事業主に委託する際の違いはありますか?

民間企業のみならず、個人事業主も入札に参加できます。これまでも個人が落札して、事業を遂行したケースは多くあるといえるでしょう。

特に企業数の少ない地域では高い能力を持つ個人の力を借りるため、「随意契約」を結んだ例もあります。しかし、一般的には法人の方が個人事業主よりも社会的信用を得られやすい傾向にあります。

自治体側から委託する方法に明確な違いはありませんが、地域性や課題内容に応じて法人か個人事業主のどちらが適切かを判断することが重要です。

民間企業へ依頼する際のポイントを教えてください。

多くの民間企業が自治体ビジネスに注目しており、地方創生への関心を持つ企業も増えてきました。一方で、自治体との情報共有や相談の場が不足していると多くの企業が感じていることも事実です。

理想的な企業との連携を目指すためには、まず自治体のニーズをよく理解してもらうことがポイントです。最近では自治体の課題や要望を把握し、民間企業とつなげてくれるマッチングサービスも登場しています。自治体が民間企業と連携するために、このようなサービスを活用することも1つの方法です。

>>随意契約をわかりやすく解説!意味や条件など

まとめ

自治体が民間企業と連携して業務を依頼すると、コストの削減やサービス品質の向上、人手不足の解消などさまざまなメリットがあります。民間企業への委託を成功させるには、自治体からも積極的に課題や情報を民間企業へ分かりやすく開示することが求められています。

事前に具体的なニーズを示すことで、双方の課題認識にギャップが生まれることを防ぎ、民間企業からのより魅力的な提案が期待できます。必要に応じてマッチングサービスなどを利用して、効果的な民間企業との連携を目指すことが地域課題解決の第一歩となるでしょう。


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