自治体でアウトソーシングを活用!メリット・活用例・選ぶ際の注意点を紹介
近年、民間企業に業務を依頼する「アウトソーシング」を活用する自治体が増えています。自治体向けのアウトソーシングとは、どのようなサービスなのでしょうか。本記事では、自治体向けアウトソーシングのメリットや活用例、活用する際のポイントについてご紹介します。
目次
- 自治体向けアウトソーシングとは?業務委託との違い
- 自治体向けアウトソーシングが注目されている背景
- 自治体がアウトソーシングを活用するメリット
-
人件費・作業コストを削減できる
- 人手不足を解消できる
- サービスの質を向上させられる
- 専門知識を有効活用できる
- 自治体のアウトソーシング活用例
- 窓口業務(対面・コールセンターなど)
-
マイナンバー申請の手続き業務
- 支援金・給付金等の関連業務
-
プレミアム商品券の関連業務
- ICT関連業務
- 多言語対応
- 自治体がアウトソーシングを選ぶ際の注意点
- サービスの質が低くなる可能性がある
- 民間企業と齟齬が生じる可能性がある
- 自治体がアウトソーシングを効果的に活用するためのポイント
- 業務を包括的に依頼する
- 実績がある民間業者を選定する
- まとめ
自治体向けアウトソーシングとは?業務委託との違い
「アウトソーシング」とは、仕事を外部の事業者に依頼する業務形態のことです。似たような業務形態には、アウトソーシングとよく混同されやすい「業務委託」があります。
アウトソーシングと業務委託は、業務上の「意思決定」を誰が行うかで区別されます。アウトソーシングは、外部の会社に業務上の決定権を全て任せる形態です。一方、業務委託では意思決定までは任せず、業務のみを委託業者に依頼します。
最近では、自治体や行政が民間企業に対して、アウトソーシングするケースが多くあります。給付金関連業務・マイナンバー申請業務・コールセンター業務など、アウトソーシングの対象とされる業務内容も幅広くなっています。
自治体向けアウトソーシングが注目されている背景
自治体向けアウトソーシングの市場規模は、近年急激に拡大しています。
コロナ関連業務以外に、アウトソーシング可能な自治体業務は多くあります。そのため、今後さらにアウトソーシングを活用する自治体は増加するでしょう。
その背景には、大きく2つの理由があります。
1つ目に、住民の生活に関わる公的業務が民間委託できるようになったことが挙げられます。そもそも以前は、自治体や行政の業務は民間委託が不可とされていました。しかし、昨今の法整備によって企業への委託が可能になり、さまざまな業務でアウトソーシングが活用されています。
2つ目に、少子高齢化が原因で人口が減少したことも大きく関わっています。自治体は、日本の人口が減少したために、限られた財源・人員で住民サービスを提供しなければなりません。
そのため、人材不足の状況下でも質の高いサービスを提供できるように、アウトソーシングの利用が増加しました。煩雑な業務や、作業に関わるさまざまなコストを削減する狙いがあるのです。
自治体がアウトソーシングを活用するメリット
自治体が民間企業に業務をアウトソーシングするメリットは何でしょうか。本章では、アウトソーシングを活用するメリットを4つ解説します。
人件費・作業コストを削減できる
人件費・作業コストを削減できることは大きなメリットです。業務量が増えると、従業員も新たに雇う必要があります。さらに、新しく入社した従業員に研修や教育を行わなければなりません。
それらの人件費や作業コストを削減するために、アウトソーシングが有効です。人員の増員を考えている業務について、民間企業にアウトソーシングすることで、人材採用・教育にかかるコスト削減や、作業効率の向上が期待できます。
人手不足を解消できる
人手不足を解消できることもメリットといえます。
前述した通り、日本の人口減少は年々加速しています。それに伴う人手不足が深刻化していることも事実です。
限られた人員で、質の高いサービスを提供するには、既存の職員に負荷がかかってしまい、長時間労働につながるおそれがあります。業務の一部を民間企業にアウトソーシングすることで、人手不足の課題解決が期待されます。
サービスの質を向上させられる
サービスの質を向上させられることも、メリットとして挙げられます。
そもそも自治体の役割とは、住民が生活しやすい地域社会を創造して、住民の暮らしを守ることです。そのため、その目的に付随する複雑な業務がたくさんあります。
これらの業務に、アウトソーシングを用いることで、自治体は意思決定を含めた、業務全てを委託することが可能です。
アウトソーシングすれば、自治体はその業務に触れる必要はなくなるため、煩雑な業務の削減ができ、また職員にしか担当できない重要な業務に専念できます。このように、専門業務に注力できる体制を整えることで、業務や住民サービスの品質向上につながります。
専門知識を有効活用できる
専門知識を有効活用できるというメリットがあります。自治体や行政では、主な業務の他にもさまざまな業務があります。そのため、自治体職員が担当する業務には、得意不得意があります。
専門知識のない職員が担当するよりも、業務を得意としているプロに任せたほうが業務効率は高まります。そのため、アウトソーシングは、外部の専門的な知識を有効活用するためにも役立ちます。
自治体のアウトソーシング活用例
自治体のアウトソーシングはどのように活用されているのでしょうか。
この章では、6つのアウトソーシング活用例をご紹介します。
窓口業務(対面・コールセンターなど)
アウトソーシングを活用した業務事例として、対面やコールセンターでの窓口業務が挙げられます。自治体における具体的な窓口業務としては、以下のようなものがあります。
1.住民票をはじめとした各種証明書対応
2.国民健康保険に関する対応
3.児童手当の受付
4.税務関連業務
昨今では、これらを民間企業に委託することで、事務作業の効率化が図られています。埼玉県所沢市では、アウトソーシングによって職員の窓口業務の時間が削減されました。その結果、職員が処理すべき作業に注力できたという効果がありました。
マイナンバー申請の手続き業務
2023年の年明けから、マイナポイント付与最終キャンペーンでマイナンバーカードの申請がさらに増加しました。しかしそれに伴い、申請対応の人材不足が課題となりました。そこで、申請時の本人確認や出張会場運営などの申請補助業務を、アウトソーシングするという方法がとられています。
支援金・給付金等の関連業務
近年では、新型コロナウイルスの経済措置として、支援金・給付金の申請や問い合わせ対応が増加しています。これらの対応も、アウトソーシングが活躍する場面の一つです。
各自治体は、申請書の受付確認や振り込み作業など、膨大な業務量を請け負っています。これらの負担は民間企業に業務委託することで解消されるでしょう。企業のノウハウを活かして、申請書をデータ化して、作業効率向上だけではなく情報のセキュリティ強化につなげています。
プレミアム商品券の関連業務
プレミアム商品券の関連業務にもアウトソーシング活用事例があります。
2019年に消費税増税にかかる地域経済活性化対策として、プレミアム商品券の運用が実施されました。しかし、商品券の業務実施は、商品券の発券作業・問い合わせ対応・換金に応じた振込業務など、多大な作業量を必要としました。
意思決定も含む全ての業務を任せるというアウトソーシングの特徴を活かせば、商品券の発行から換金に至るまで一連の業務を任せることができます。
ICT関連業務
ICT関連業務におけるアウトソーシングの活用例として、次のようなものがあります。北九州市では、ICTの専門知識を有する企業の力を借り、ICTを活用した総合窓口の設置を実現しました。住民のデータをシステムで抽出して一元化することで、複数ある区役所の市民課を1つにまとめ上げたのです。その結果、職員に対する業務負担の軽減はもちろんのこと、住民も各窓口を回らなくてよくなりました。
多言語対応
多言語対応に関してもアウトソーシングが活用されています。
新型コロナウイルス感染拡大の影響から、訪日外国人の数は一度大きく減少しましたが、感染症が収まりつつある近年は増加傾向にあります。
こうした情勢のもと、多言語サービスの必要性は、各自治体で高まっています。多言語サービスを提供している会社のノウハウを活用することで、外国語が話せる職員を確保するという難題を解消できます。
自治体がアウトソーシングを選ぶ際の注意点
自治体向けアウトソーシングの活用は、多くのメリットがある反面、注意しておくべき点もあります。本章では、自治体がアウトソーシングを活用する際の注意点を2つご紹介します
サービスの質が低くなる可能性がある
サービスの質が低くなる可能性を孕んでいることに気を付ける必要があります。自治体だけで業務を完結する場合、住民サービスの内容チェックや業務の進捗状況について、随時把握することが可能です。
しかし、アウトソーシングを活用した場合、住民に提供するサービスの質や業務進行などのコントロールが難しいといえます。そのため、委託先の企業と密に連携を取り合うことが重要といえます。
民間企業と齟齬が生じる可能性がある
アウトソーシング先の民間企業と齟齬が発生する可能性にも注意しなければなりません。例えば、アウトソーシング先の企業からの高度な提案に対して、自治体職員の知識不足が原因で、認識のズレが発生することも考えられます。その認識のズレから、大きなトラブルへとつながるリスクがあります。
自治体がアウトソーシングを効果的に活用するためのポイント
本章では、自治体がアウトソーシングを効果的に活用する際に押さえておきたいポイントを2つご紹介します。
業務を包括的に依頼する
各業務を複数の企業に依頼するのではなく、1つの企業に一括で業務を依頼すると、各業務の連携がしやすくなります。
問い合わせ応対や書類作成などの業務は、それぞれ相互関係にあるため、各業務を別企業にアウトソーシングすると、むしろ業務がさらに煩雑になる場合もあります。本末転倒な事態にならないために、信用できる民間企業に、同じジャンルの業務を包括してアウトソーシングする方がよいでしょう。
実績がある民間業者を選定する
アウトソーシング先を選定する際は、以下の項目について確認しておく必要があります。
1.業務のノウハウや専門性は高いか
2.類似案件の実績、経験は豊富か
3.依頼する業務の対応力や体制はあるか
これらのポイントから適切な民間企業を見極めて、業務を依頼することが大切です。
まとめ
本記事では、自治体がアウトソーシングを活用するメリット、その活用例、そして活用する際のポイントをご紹介しました。自治体もアウトソーシング先の企業もそれぞれにしか担当できない役割があります。自治体と民間企業の両者が持つ、それぞれの得意分野を活かして、お互いに補完しながら地域社会の創生を目指しましょう。