EC市場とEC物流の課題とは?特徴とメリット・デメリットを纏めて解説!
企業や小売店のオンライン展開が加速し、EC物流の市場規模は拡大の傾向にあります。しかし、業務が増加・複雑化し、EC物流の課題に直面している企業も多いでしょう。そこで今回は、EC物流の市場規模やEC物流の課題について解説します。また、課題を解決するための具体的な方法についてご紹介します。
目次
EC物流とは
EC物流とは、ECサイトにおいて商品の仕入れからユーザーへの配送までの一連のプロセスを指します。商品の保管や情報管理など、多岐にわたる業務が含まれるのが特徴です。実店舗と異なり、ECサイトでは商品を配送する必要があるため、ユーザーの要望に合わせた迅速なサービスが求められます。そのため、物流業務は実店舗よりも負担が大きくなります。
EC物流市場の種類
EC物流のBtoC市場は、大きくわけると以下の3つに分類できます。
・物販型(食品・家電・化粧品・医薬品・雑貨・家具・衣類・自動車など)
・サービス型(飲食サービス・旅行サービス・金融サービス・理美容サービスなど)
・デジタル型(有料音楽配信・有料動画配信・電子出版・オンラインゲームなど)
こちらでは、縮小傾向になりつつある「サービス型」と顕著な伸び率を見せる「デジタル型」の市場規模に注目して解説します。
※参考:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました – 経済産業省
サービス型の市場規模
新型コロナウイルスの影響などにより、旅行サービスや飲食サービスは大幅に減少しました。しかし、フードデリバリーサービス、チケット販売などはプラス傾向にあります。新型コロナウイルスの影響が少なくなれば、急激に需要も拡大していくでしょう。
デジタル型の市場規模
デジタル型は、3分野の中でも顕著な伸び率を見せており、注目されています。スマートフォンなどの普及や巣ごもり需要が、市場を拡大させたと考えられています。デジタル型は、現在非常に勢いがありますが、将来的にも成長が継続するかはまだ予測が難しい状況です。
EC物流が課題とする難しさ
市場規模の拡大が見込まれるEC物流ですが、以下のような課題も抱えています。
在庫管理の把握
EC物流のカギといえるのが、効率的な在庫管理です。賞味期限やロットの管理は不可欠で、リアルタイムで管理していくことが市場拡大へのチャンスといえるでしょう。
スピーディな商品の受注管理
EC物流は、スピーディな商品配送を求められています。そのため、商品が遅れると、顧客の関心が薄れる可能性があり、キャンセルされたり競合他社に乗り換えられたりする恐れもあります。市場のチャンスをつかむためには、顧客の期待に応える迅速な対応が不可欠です。
宅配網維持のための料金改定
EC業界の成長に伴って荷物の数量が増え、配達ドライバーも不足しており、企業や顧客が望むEC物流を維持するのが難しくなっています。現在の宅配網を保つには、配送業者は料金を見直して値上げせざるを得ません。料金改定は、送料の値上げに直結するため、EC事業者は適切な対策を練る必要があります。
在庫管理の物流コスト
物流業界は特に人手に依存しているため、賃金上昇が大きなコスト負担となっています。このコスト負担に対処するため、重要な対策となるのが「自動化による労力削減」です。完全な全自動化にはまだ時間がかかるかもしれませんが、「人×機械×IT」の組み合わせで作業工数を減らすことで、単価上昇に対抗し、物流コストの軽減を目指すことが今後の大きな課題です。
課題解決の2つの施策
EC物流は、さまざまな課題を抱えていますが、以下のような施策で解決することもあります。
アウトソーシングの活用
自社の強みを最大限に引き出し、業界で輝くためには、コア業務とノンコア業務の見極めが必要です。EC事業者においては、商品の企画開発と販売というコア業務に注力する必要があります。ノンコア業務はバックヤードのプロにアウトソーシングすることで、商流と物流の両面を効率化できます。品質確保とともに、成功につながる戦略的な経営が可能となるでしょう。
管理システムの活用
限られた人数で在庫管理・入荷・出荷・返品の品質を維持し、効率を向上させるには、ITによる支援が必要です。特にEC市場での成功は、顧客のニーズを正確に把握し、迅速に対応できるかにかかっています。手作業だけでは十分な対応が難しいため、顧客の購買データを最大限に活用するIT支援が不可欠です。成功するためには、顧客のニーズに応えるシステム導入がカギとなります。管理システムの活用など、今後ますますIT支援の重要性が高まるでしょう。
アウトソーシングによって得られるメリット
ノンコア業務をアウトソーシングすることで得られる主なメリットは、以下のとおりです。
コストの削減が可能
物流アウトソーシングは、EC事業者にとって損益分岐点を下げ、変動費化による削減効果をもたらす重要な選択肢となります。通常、自社で作業員を雇っている場合、人件費は一定です。物量がどれだけ増減しても、人件費は変わりません。一方、物流アウトソーシングでは、作業量に応じて費用が変動します。月に仕事が少ない場合、費用も合わせて減少します。件数が伸びない月は費用も減ることになるので、企業の財務面にも好影響をもたらすことができるでしょう。
配送する品質の安定が可能
物流のプロである業者に物流アウトソーシングすれば、工数が削減できるだけではなく、配送品質も向上します。リアルタイムな情報で賞味期限やロットが管理され、商品バーコードで在庫管理や入出荷作業が行われるため、正確かつ効率的な業務が実現するでしょう。万が一ミスが発生した場合でも、十分な管理体制下にあるため、迅速な対応や改善策を行えるのが魅力です。
アウトソーシングによるデメリット
ノンコア業務をアウトソーシングすると多くのメリットが得られますが、以下のようなデメリットもあります。
ノウハウが蓄積されない
物流アウトソーシングを選ぶと、高品質なサービスを享受できますが、自社でのノウハウ蓄積はされません。今後も物流アウトソーシングを維持し続けられるのであれば問題ありませんが、将来的に自社での配送業務を検討する際には、デメリットがあることも考慮しておきましょう。
顧客情報の漏洩の危険性
万が一顧客情報の漏洩が発生すると、信用回復に長い時間がかかるため、信頼できる企業を選ぶことが重要です。顧客情報の漏洩を未然に防ぐ取り組みをどのように行っているかを事前に確認することも大切です。
アウトソーシングを選ぶ際のポイント
EC事業者にとって、利益をもたらすアウトソーシングですが、十分な検討をせずに選ぶと、顧客情報の漏洩など重大なトラブルにつながることもあります。選定方法のコツは以下のとおりです。
信頼できる業者の選定
信頼できる業者選びを行う場合は、以下のようなポイントを押さえましょう。
・自社で扱っている商品ジャンルを取り扱っているか
・打ち合わせで要望を伝えた際にどのような提案をしてくれるか
・見積もりが想定の範囲内にあるか
・有効期間・中途解約や損害賠償の請求について
倉庫の実際の状態を自分の目で確認できる機会もあるので、サービス利用前に積極的に訪問し、確かめることも大切です。
今後のEC物流について
経済産業省の調査報告*2によると、2020年時点の世界のBtoCのEC市場は4.28兆米ドル規模で、EC化率は18.0%でした。同省の予測では、2024年までにEC化率が21.8%へ上昇する見込みです。
一方、日本の2020年時点のEC化率は8.08%なので、今後の成長の余地が大きいと考えられるでしょう。ただし、大手企業の輸送コストが増加傾向にあるため、EC物流市場にも大きな影響を与えることが懸念されています。
参考:経済産業省|令和2年度 産業経済研究委託事業 (電子商取引に関する市場調査)
まとめ
EC物流の市場規模が拡大する理由やEC物流が課題とする難しさについて解説しました。今後も拡大していくと予想されるEC物流について、自社でしっかりと現状を把握し、今後の方針を決める必要があります。今回は、EC物流の課題解決方法やアウトソーシングについてもご紹介いたしました。ぜひ参考にしてください。