ECサイトの運営業務 基本的な流れと費用、必要なスキルを解説!
インターネットやスマートフォンの普及により、オンライン上で買い物ができる「ECサイト」の購入者が増加中です。ECサイトを運営する際の業務は多岐にわたるため、さまざまなスキルや事前の準備が必要になります。今回は、ECサイトを運営するうえで必要な業務内容や流れを解説し、費用や成果を出すために必要なスキル・役割についてくわしくご紹介します。
目次
- ECサイト運営業務とは?
- フロントエンド業務
- バックエンド業務
- ECサイトの運営に必要な10の作業とその流れ
- 商品の企画をする
- 販売計画を立てる
- 計画に基づいた商品の仕入れ・製造
- 販路としてのECサイトを制作する
- 商品の撮影とサイトへの登録
- 適切な媒体でプロモーションを行う
- 受注情報を正確に管理する
- 在庫状況を確認・調整する
- 梱包と出荷作業
- アフターサービス
- ECサイトの構築と運営にかかる費用
- サイト構築にかかる費用
- サイト運営にかかる費用
- ECサイトの運営で成果を出すために必要なスキル
- 商品企画・マーチャンダイジングのスキル
- ECサイトのデザインスキル
- Webマーケティングのスキル
- カスタマーサポートなど接客のスキル
- まとめ
ECサイト運営業務とは?
ECサイトの運営業務は、一般的に以下のように「フロント業務」と「バックエンド業務」に分けることができます。業務の性質がそれぞれ大きく異なるため、実務においても担当を分けるケースが多いようです。それぞれの業務内容についてくわしく解説します。
フロントエンド業務
フロント業務は、主にマーケティング活動を行う業務です。ECサイト運営、商品企画、プロモーションなどを担当します。新しい商品やサービスを提供したばかりの頃は、売上が上がりにくい傾向があります。そのような場合に、広告やWebマーケティングによってユーザーを増やしたり、魅力的な訴求で販売を促進したりするのがフロント業務の主な役割です。フロント業務が上手くいかないと、ECサイトへの集客を見込みにくく、売り上げにつながりません。フロント業務は、ECサイト運営にとって欠かせない業務です。
バックエンド業務
バックエンド業務はフルフィルメントとも呼ばれ、主に顧客に商品・サービスを提供した後の業務を指します。例えば、在庫管理やピッキング、出荷、商品配送メールの発信、アフターサービスなどは、全てバックエンド業務です。ここでミスが発生した場合、「次回の注文につながらない」「クレームに発展する」など、ECサイトの成長を妨げるリスクがあるため、ECサイト運営において重要な業務といえるでしょう。
ECサイトの規模が拡大すると、自ずと受注件数も増加します。大規模なECサイトの場合は、1日に数百から数千件もの受注が入ることもあるため、バックエンド業務の効率化は必須です。バックエンド業務が煩雑になった場合は、基幹システムとECシステムの連携や在庫管理システムの導入など、施策を検討する必要があります。
ECサイトの運営に必要な10の作業とその流れ
ECサイト運営には多くの作業が必用ですが、こちらでは重要な10の作業とその流れについて解説します。
商品の企画をする
商品企画はECサイトを運営するうえで、優先度の高い業務といえるでしょう。商品企画が上手くいかなければユーザーに興味をもってもらえず、どんなにマーケティングを頑張っても売れません。商品企画では、トレンドやターゲットを意識しつつ、どのような商品なら売れるかを考えます。トレンドや季節を考慮し、ユーザーニーズの調査を行うなど、入念な作業が必要です。また商品企画では、売れる数だけを優先するのではなく、利益率にも注目するのがポイントです。例えば、同じ価格の商品が2つあった場合、商品Aが利益率60%、商品Bは利益率30%だとすると、商品Bは2倍売れても商品Aと利益は同じになります。そのため、利益率が高い商品Aのような商品企画を行う必要があります。
販売計画を立てる
商品企画で商品が決定したら、次は年間の販売計画を立てます。一般的な季節イベントや周年記念イベントなどを考慮し、閑散期、通常期、繁忙期でどのくらいの売上が出せるかの戦略を練って計画をするのがポイントです。また、原価率や利益率はもちろんのこと、仕入れの頻度、個数、販売期間などを含め、綿密かつ具体的に計画する必要があります。
計画に基づいた商品の仕入れ・製造
販売計画に基づき、商品の仕入れ・製造を行います。始めは販売計画をベースに行いますが、顧客の反応や売れ行きによって臨機応変に対応することも必要です。
商品は保管するのに倉庫などの費用がかかるため、多く仕入れたり製造したりすることが良いとは限りません。しかし、商品が少なすぎて在庫が無い場合は、販売機会を失うことにもなります。
「商品がSNSで拡散されて話題になり、商品が在庫切れになってしまった」など、予想不可能な事態にも対応できるようにするのもポイントです。突然の増産や追加仕入れにも対応できるように、日頃から複数の仕入れ先を確保しておくなど、対策を練っておくとよいでしょう。
販路としてのECサイトを制作する
商品を売るためのECサイト制作や更新管理は、フロント業務の一つです。EC運営においては、根底となる業務といえます。ECサイト制作で何よりも大切なのが「いかにユーザーファーストであるか」です。コンセプトに合ったデザインであるのはもちろんのこと、ユーザにとってわかりやすく使いやすいかが設計のポイントになります。
例えば、おしゃれなデザインを目指しすぎて、ユーザーに「見にくい・わかりにくい・探しにくい」といった印象を与えてしまっては、どんなに素敵なサイトでも結果として売上に繋がりません。 できるだけ無駄を省き、何を販売し、何を伝えたいかがわかるデザインであることが重要です。
ECサイトの更新管理には、商品を登録する業務や、季節やイベントごとの特集ページ・バナーを追加するなどの業務も含まれます。 ECサイト内の情報を常に最新にしておくことによって、ユーザーの飽きを防ぎ、よりよい購入体験へと導きます。リピート購入してもらうためにも、ECサイトの更新は欠かせない作業です。
商品の撮影とサイトへの登録
サイトデザインと同じくらい大切なのが、商品の撮影とサイトへの登録です。商品登録作業は、一般的に「撮影・採寸・原稿」の頭文字を取って「ささげ業務」と呼ばれます。単純な業務のように思われがちですが、ECサイトの場合は顧客は商品を手にとって見ることができません。写真や商品説明によって商品を判断する基準にもなるため、ささげ業務は売上に直結する重要な業務といっても良いでしょう。
適切な媒体でプロモーションを行う
ECサイトが完成しても、ユーザーがサイトへアクセスしなければ、商品を見てもらうこともできません。 ECサイトを運営するには、以下のようなWebマーケティングを用いて集客対策をしていく必要があります。
マーケティングの種類 | 内容 |
---|---|
リスティング広告 | GoogleやYahoo!などの検索エンジンでキーワードを検索したときに検索画面に表示される広告 |
アフィリエイト広告 | アフィリエイターに依頼する成功報酬型の広告 |
SEO対策 | GoogleやYahoo!などの検索エンジンのサーチ結果の上位にサイトを表示させる対策 |
SNS | SNSに投稿または拡散されることによりECサイトへのアクセスを促す施策 |
メールマガジン | 定期的にメールを送信してECサイトや商品のPRを行う施策 |
受注情報を正確に管理する
顧客が商品を注文したら、顧客に「注文確認メール」を送信する必要があります。顧客は、購入元から連絡がないと正しく注文できているか不安を覚えるため、できるだけ早く受注情報(配送先や決済方法など)を正確に伝えるのが重要です。場合によっては、キャンセルや入金に関する問い合わせなどもあるため、受注管理作業には柔軟な対応が求められます。
ミスが発生してしまうと、トラブルに発展するケースも考えられます。低評価や悪い口コミが投稿されると、ブランドイメージを損ない、顧客獲得も難しくなるリスクもあります。スピードを意識しつつも、正確に管理することが重要です
在庫状況を確認・調整する
在庫管理は、販売計画や売れ行き状況をもとに、適切な在庫を確保する業務です。在庫が少ないと在庫切れによる機会損失につながり、在庫が多いとコストがかさむリスクがあり、EC運営においては、最も難しい業務といえます。適切な在庫量は、業種や商品によって異なるので、経験やノウハウが必要になります。
ECサイトだけでなく実店舗も運営している場合は、在庫管理がさらに煩雑です。店舗とECサイトで在庫や販売の状況をリンクさせ、在庫の適正量を探る必要があります。実店舗とECサイト両方の在庫状況をチェックするには、工数やリソースが必要なため、在庫管理システムの導入などを検討するとよいでしょう。
梱包と出荷作業
商品をピッキングして梱包し、配送会社に引き渡すのが、出荷作業の一連の流れです。中でも特に注意したいのは梱包です。顧客が商品を手にする瞬間は、実際にショップが顧客に接する最初の瞬間でもあります。梱包の状態によって顧客が受ける印象は大きく変わるため、今後のリピート率や売上にも大きく影響します。顧客が購入する際に抱いていた期待を裏切らないように、梱包や同梱物にも細心の注意を払うことが重要です。
「商品が破損しないような配慮をする」「梱包用の箱をおしゃれにする」「手書きのメッセージを添える」などの施策は、印象が良くなりリピートにもつながります。他社との差別化を図るためにも、梱包も商品と同じくらいこだわりをもちましょう。
アフターサービス
顧客との取引が完了した後でも重要なのが、アフターサービスです。アフターサービスの良し悪しによって、顧客が今後もECサイトを利用したいかどうかにつながります。アフターサービスといっても、以下のように業務は多岐にわたります。アフターサービスをうまく活用すれば、ECサイトの信頼度アップにもつながり、リピーターの増加も期待できるでしょう。
・問い合わせ対応
・クレーム対応
・レビュー投稿を促すメール
・次回使えるクーポンの配信
ECサイトの構築と運営にかかる費用
ECサイトの構築は、企業の規模や構築方法によって費用の相場が大きく異なるため、どのように選べば良いかわかりにくいでしょう。ここからは、一般的なサイト構築や運用にかかる費用を解説します。
サイト構築にかかる費用
ECサイトの構築方法は、自社の年商規模によって大きく変わります。一般的な年商ごとの最適な構築方法を以下にご紹介しますので、参考にしてください。
年商規模 | 構築方法 | 費用相場 |
---|---|---|
一億円未満 | ASP | ~数十万円 |
一億円~ | パッケージ型 | ~数百万円 |
オープンソース型 | 数百万円~ | |
数十億円~ | フルスクラッチ型 | 数百億円~ |
ASPやパッケージ型は安価で始められますが、高度なカスタマイズは期待できません。オープンソース型やフルスクラッチ型は、独自のデザインやカスタマイズにこだわれますが、費用が高くなる傾向があります。
サイト運営にかかる費用
ECサイト運営には、一般的に以下のようなさまざまな費用がかかります。サイト構築だけでなく、運営を継続し続けるための費用も念頭に置いておきましょう。
- 人件費
- 構築システム費
- 独自ドメインの取得・維持費用
- レンタルサーバー・ホスティング費用
- 独自SSLサーバー証明書の取得・維持費用
- 決済代行会社の契約料
- 物流サービス費用
- Web広告配信費用
ECサイトの運営で成果を出すために必要なスキル
先にご紹介したように、ECサイトを運営するにはさまざまな業務があり、それぞれの担当に必要なスキルや役割があります。こちらでは、その中でも特に重要な4つのスキルをご紹介します。
商品企画・マーチャンダイジングのスキル
ECサイト運営には、顧客が魅力的と思えるような「売れる商品」を企画することが何よりも重要です。さらに、顧客に商品を適切に届ける戦略である「マーチャンダイジング」も必要になります。マーチャンダイジングでは、設定したターゲットに向けて、品揃えや価格設定、販売方法などを決め、実践していきます。以下のようなポイントを押さえられているかどうかで、売上を伸ばせるかどうかが決まります。
- 市場が求める商品が売り出せていて品揃えはあるか
- シーズンや季節にふさわしい商品が揃っているか
- 関連性が深い商品を並べるなど顧客の動線を考えているか
- 顧客の特徴や時期を考慮した販売数量が確保できているか
- 商品に見合った価格もしくは顧客が求めるような適正価格になっているか
ECサイトのデザインスキル
ECサイトでは、顧客が商品を直接手にして判断することができません。そのため、販促ページやバナーなど、ECサイトのデザインは印象を大きく左右します。ただし、ただおしゃれなであれば良いのではなく、顧客にとってわかりやすいことが何よりも大切です。最近では、SNSを使って販促を行う企業も増えています。商品の使い方や実際に使った様子などを動画で説明するケースもあるので、動画制作のスキルもあれば、さらに重宝されるでしょう。
Webマーケティングのスキル
どんなに素晴らしいECサイトであっても、集客ができなければ商品は売れません。まずは、Webマーケティングによって集客することが何よりも大切です。自社商品のジャンルやターゲットによって、Webマーケティングの手法も大きく異なるため、商品やターゲットにマッチした方法を提案できるスキルは非常に重要になります。
カスタマーサポートなど接客のスキル
カスタマーサポートなどの接客も、ECサイト運営に欠かせない業務です。問い合わせやクレーム対応など、顧客と接する業務になるので、対人スキルが必要になります。顧客が商品やサービスを気に入っていたとしても、接客態度に違和感があれば、今後付き合いたくないと判断されるリスクもあるので注意しましょう。顧客の目線や気持ちを考えて、丁寧に対応することが大切です。
まとめ
ECサイトを運営するには、多岐にわたる業務が必要です。それぞれに必要なスキルも異なるため、業務内容を熟知し、事前の準備をしっかり行う必要があります。ECサイトの構築や運営にかかる費用は、規模によっても異なります。今回ご紹介した内容を参考に、円滑なECサイト運営を目指してください。