PBX(電話交換機)基礎知識 導入のポイントや交換のタイミングも解説
多くの企業は、社内の電話機を効率的に利用するために、PBX(電話交換機)を活用しています。今回は、PBXの基礎知識をはじめ、PBXの種類、導入時のポイントについてくわしく解説します。
目次
PBXとは
PBXとは「Private Branch Exchange」の略語で、日本語では「電話交換機」を意味します。コールセンターやオフィスなどにある複数の電話回線を集約し、内線同士を接続したり外線と内線の接続を制御する役割があります。近年ではPBXの種類も増え、より高度な機能を備えたものも登場しています。
PBXで出来る事
PBXは、以下の機能を使うことが可能です。
外線における発信・着信の制御 | 着信制御 | 契約した電話番号を親番号に設定し、回線を共有した別番号を子番号として追加する |
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発信制御 | 外線への発信を以下のいずれかの方法で制御する ・LCR(電話番号別に通話料が安いプロバイダーを選択する) ・ACR(事前に決められたプロバイダーを選択する) |
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転送機能 | 不在転送 | 不在時や多忙時に、指定の番号に転送する |
話中転送 | 電話機が通話中のとき、設定された転送先へ転送する | |
応答遅延転送 | 呼び出し回数内に応答しない場合は別の電話に転送する | |
着信選択転送 | 設定された条件に合う着信だけを転送する | |
圏外転送 | スマホを内線化する際、そのスマホが圏外にある場合は、ほかの圏内の電話に転送する | |
内線通話機能 | PBXを介して内線同士で通話する | |
代表番号着信機能 | あらかじめ設定された優先順位に従って、事前に登録したグループの電話機に代表番号の着信をつなぐ | |
パーク保留機能 | パーク保留ボタンを押すと、通話中に任意の電話機で外線が受けられる | |
ダイヤルイン機能 | 契約している電話番号以外に、対応できる電話番号を増やす |
PBXとビジネスフォンとの違い
PBXと混同されやすい用語に「ビジネスフォン」があります。PBXとビジネスフォンは、複数の拠点で利用が可能か否かが大きな違いです。PBXは、別のフロアをはじめ、別のオフィスや支店など距離が離れた場所でも、さまざまな機能が使えます。しかし、ビジネスフォンは、同一拠点かつ同一フロアでないと利用できません。また、PBXはデジタル処理が可能なため、数千台以上の接続が可能です。しかし、ビジネスフォンはアナログ接続となるため、接続可能な電話機の台数にも限りがあるという違いがあります。
PBXの種類
PBXは、大きく3種類に分けられます。こちらでは、それぞれの特徴についてくわしく解説します。
IP-PBX
IP-PBXとは、IPネットワークを用いるPBXです。電話線を利用するわけではないため、専門業者による工事は不要です。社内LANに接続すれば設定が完了し、各種設定もパソコン上で行えます。また、インターネットを介した複数拠点の接続が可能です。場所の制約がないため、すべての拠点を内線で接続できます。通話料の安いIP電話を利用できることから、通信コストの削減につながります。
IPネットワークを使うため、パソコンとの連携性が高いのも特徴です。コンピュータと電話・FAXを連携させるCTIなどのアプリケーションを電話関連業務で利用でき、業務を効率化できます。
IP-PBXのデメリットは、セキュリティ上の問題です。インターネット回線を利用するため、ハッキングのリスクが伴う点には注意が必要です。
レガシーPBX
レガシーPBXとは、最も古いタイプのPBXで、電話線を利用するのが特徴です。オフィスにPBX本体を設置し、電話回線を使って装置や電話機を接続します。レガシーPBXには、下記のようなメリットがあります。
・インターネット回線がなくても外線と内線を利用できる
・サーバーダウン・停電の影響を受けない
ただし、電話線を使用するため、導入時や内装工事を行う際には「電気通信の工事担任者」という専門の資格をもつ業者に依頼しなければなりません。そのため、オフィスのレイアウトを変更するたびに、PBXの移動や電話回線の工事などが必要になります。また、レガシーPBXは、電話線が届く範囲でしか接続できない点もデメリットです。導入時や運営管理のコストが高いという懸念もあります。
クラウドPBX
クラウドPBXとは、クラウド環境で利用するPBXです。社内にPBX本体を設置する必要がなく、事業の移転・拡大、レイアウト変更などにも柔軟に対応でき、導入コストが削減できます。メンテナンスはベンダーが行うため、自社でPBXを管理する必要はありません。
基本的な機能は、IP-PBXとほぼ同じです。IPネットワークを利用して通信するため、PCやスマホとの連携性に優れているのが特徴です。ただし、通話のクオリティや音質がインターネット環境に左右されやすい点はデメリットといえるでしょう。回線が混み合う時間帯は、音声品質の低下を招く恐れがあります。
PBXの導入のポイント
PBXを導入・交換する際は、タイミングや注意点、耐用年数を理解した上で検討することが大切です。こちらでは、それぞれのポイントについて解説します。
PBXを交換するタイミング
導入時にコストがかかることもあり、同じPBXを「壊れていないから」「まだ使えているから」などの理由で利用し続けている企業は多いでしょう。しかし、長期間の利用は、故障やトラブルの原因になります。保守期間が切れている場合は、無償での修理ができません。故障の際に高額な費用を請求されるケースもあるので、注意しましょう。トラブルが復旧しない場合、完全に業務が止まってしまうなど、業務に支障が出るケースも予測されます。そのため、PBXは、耐用年数内に交換するのがおすすめです。PBXの耐用年数については、後ほど解説します。
PBXの選ぶ際の着目点
PBXを選ぶ際は、下記4つに注意しましょう。
・コスト
・設置工事の必要性
・必要な機能
・セキュリティ
コストを抑えたい場合は、IP-PBXかクラウドPBXがおすすめです。特にクラウドPBXは、導入費用がほとんどかからず、月額費用も安い傾向があります。ただし事業規模が大きい場合は、トータルで見るとIP-PBXのほうが安く済むケースもあるので注意しましょう。
自社にPBXを設置すれば、月々の費用が発生せず、機能を自由にカスタマイズできるメリットがあります。ただし、設備の設置スペースが必要で、導入コストやメンテナンス費用がかかるなどの負担もあります。設置の際は、自社で行うのかクラウドPBXを利用するのかよく検討しましょう。
PBXの機能にはさまざまなものがありますが、不要な機能が付いている場合は、コストがかさむ可能性もあるので、注意が必要です。あらかじめ自社に必要な機能をピックアップして、ニーズに合うPBXを選びましょう。
注意したいのは、セキュリティについてです。IP-PBXやクラウドPBXを選ぶ場合は、セキュリティ対策を厳重に行う必要があります。ただし、クラウドPBXのセキュリティ管理は、ベンダーによって行われます。安全性を高めたくても自社は関与できないため、クラウドPBXを選ぶ際は、セキュリティ面を特に注意して慎重に検討しましょう。
PBXの耐用年数
IP-PBXやレガシーPBXなど、置き型タイプのPBXの法定耐用年数は6年です。法定耐用年数とは、減価償却できる年数のことであって、PBXの寿命とは異なります。6年を超えて使用した場合は、減価償却できません。リースの場合は、法定耐用年数の最大1.5倍までがリース期間として認められており、ほとんどのリース会社では7年をリース期間として設定しています。購入の場合は、故障するリスクがあるため、法定耐用年数の6年で交換するのが良いタイミングです。リースの場合は、リース期間が満了する7年でPBXを交換するとよいでしょう。中古のPBXを購入した場合は、サポート期間が終了する前に交換するのがおすすめです。
まとめ
PBXの一般的な機能をはじめ、種類や導入時の注意点について解説しました。PBXを導入する際は、解説したポイントを押さえながら、自社に合ったものを選びましょう。