ビジュアルIVRって何?IVRと何が違うの?導入のメリット・デメリット
これまでのIVRは音声で応答していましたが、近年はアプリやWebサイトを使用する「ビジュアルIVR」が注目され、多くの企業が導入を始めています。今回は、ビジュアルIVRの概要や導入するメリット・デメリットをはじめ、具体的な導入のポイントについてくわしく解説していきます。
目次
ビジュアルIVRとは
そもそも「IVR」とは、「Interactive Voice Response」の略語で、日本語では「自動音声応答」と表すことができます。IVRは音声で応答しますが、ビジュアルIVRはアプリやWebサイトを使って問い合わせメニューを可視化させたシステムです。まずは、なぜビジュアルIVRが重視されるようになったのか、主な仕組みや性能、IVRとの違いをチェックしてみましょう。
ビジュアルIVRが重視される背景とは
従来のIVRは、顧客が音声認識やプッシュ操作をすることによって、事前に録音してある音声で応答するものでした。しかし、従来のIVRには、以下のような問題もありました。
・ガイダンスを全て聞くまでプッシュ操作ができない
・ガイダンスを聞き逃すと、もう一度聞かなければならない
・プッシュ操作の繰り返しが多い場合、時間がかかる
上記のような問題点を解決するために登場したのがビジュアルIVRです。音声ガイダンスで行っていた案内が可視化されるため、顧客は複数の選択肢の中から必要なものをすぐに選択できるようになりました。従来のIVRのように、最後まで聞いたり、繰り返し聞いたりする必要がなくなるため、顧客の不満やストレスを解消できます。そのため、顧客満足度向上などを目的とする多くの企業から注目されるようになりました。
ビジュアルIVRの仕組みと性能
ビジュアルIVRの画面は、メニューの数、内容、遷移先ページなどを自由に設定することが可能です。例えば、「コールセンターのオペレーターに問い合わせる」「チャットで問い合わせる」「FAQページを見る」などの選択肢を画像で示すと、顧客は希望に応じたボタンを押します。従来のIVRのように、電話口で長時間の音声ガイダンスを聞く必要がなく、顧客がスマホでメニューを押すことで簡単に問題解決ができる仕組みになっています。
IVRとビジュアルIVRの違いとは
IVRは、音声によるガイダンスに従うことで担当オペレーターにつながる仕組みでした。しかし、ビジュアルIVRは、PCやスマホの画面から「電話」「チャット」「FAQページ」などさまざまなチャネルへ顧客を誘導できます。IVRは、全ての質問に応えられるだけのオペレーター数が必要です。しかしビジュアルIVRの場合は、チャットやFAQページを選択した顧客に対して直接応答する必要がありません。つまり、IVRよりもオペレーターの人数を削減することができます。
オペレーターの業務負担が軽減されることで、本当に電話での案内が必要な顧客への対応がすぐにできるようになり、「オペレーターにつながるまでの時間が長い」という顧客のストレスも削減可能です。また、ビジュアルIVRは、24時間受付が可能なため、その場ですぐに課題を解決したいという顧客ニーズにも応えられます。
ビジュアルIVRのアクセスの種類
ビジュアルIVRの画面を顧客に共有する方法は、以下のように2種類あります。こちらでは、それぞれの特徴についてくわしく解説します。
URLからのアクセス
顧客が電話で問い合わせると、SMSでURLが案内され、ビジュアルIVRの画面に辿り着く仕組みです。SMSとは、携帯電話の番号宛にテキストメッセージを送信するサービスです。専用のアプリが必要ないため、顧客が手間をかけることなくメッセージを開封しやすいメリットがあります。
専用アプリからのアクセス
あらかじめ顧客のスマホなどに専用アプリをインストールしてもらい、アプリに搭載されているビジュアルIVRの機能を使ってもらう仕組みです。アプリを起動するには、特定の番号に電話すると自動でアプリが起動するパターンと、顧客自身がアプリを起動するパターンがあります。スマホアプリには、端末のOSに応じて「iOSアプリ」と「Androidアプリ」があるので、幅広い顧客に対応するためには、それぞれのOS別にアプリを開発する必要があります。
ビジュアルIVRの導入について
ビジュアルIVRを導入するには、期間やコストが必要になります。効果的に運用していくためにも、メリット・デメリットだけでなく、導入するタイミングや注意点も理解しておきましょう。
ビジュアルIVRの導入タイミングとは
自社が以下のような問題や課題に直面したときは、ビジュアルIVRを導入するタイミングといって良いでしょう。
・慢性的にオペレーターの数が足りない
・365日24時間稼働にしたい
・商品発売日やイベントなど特定のタイミングで問い合わせが集中する
・コールセンターなどが混雑し機会損失を招いている
・コールセンター以外の問題解決方法にもわかりやすく誘導したい
・IVRの音声ガイダンスが長いまたは複雑
・顧客体験や顧客満足度の向上を狙いたい
ビジュアルIVRの導入のメリット
ビジュアルIVRを導入することによって得られるメリットを、もう少しくわしく解説していきます。
顧客のストレス軽減による顧客満足度の向上
先にご紹介したとおり、従来のIVRには「操作が長い」「繰り返し聞かなくてはならないケースがある」などのデメリットがあります。ビジュアルIVRを導入すれば、顧客は自分のPCやスマホからメニューを見て、すぐに選択することが可能です。顧客の最終的な目的が「オペレーターにつないでもらいたい」という同じ結果であっても、従来のIVRでは全ての音声ガイダンスを聞き、メニューを選択しながら進んでいかなければなりません。しかしビジュアルIVRの場合は、目で見てボタンを押して進めば良いので、問題解決までの時間に圧倒的な差が生まれます。マーケティングでは、顧客の問題解決までのスピードが早ければ早いほど、CX(顧客体験価値)が向上できるとされています。
また、顧客の中には音声を聞き取りにくい人や、文字で見た方が問題解決がしやすいという人もいます。IVRでは音声のみの案内しかできませんが、ビジュアルIVRでは電話以外にも「チャット」「FAQページ」などの選択肢が与えられるため、顧客は自分に合った自己解決方法が選べます。顧客の問題解決のための時間を縮めたり、選択肢の幅が広がったりすることで、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
365日24時間稼働により機会損失を防止
ビジュアルIVRは「チャット」「FAQページ」のような無人で対応できる機能を搭載できるため、24時間365日にわたり稼働が可能です。簡単な問題解決や資料請求などの定型的な顧客ニーズに対して、時間を問わず対応できます。「資料請求をしたいけれどコールセンターに問い合わせるのが面倒」「すぐに問い合わせをしたい」などの希望を持った顧客の機会損失も防止できます。また、ビジュアルIVRでコールセンターに誘導する際に混雑が見込まれる場合は、コールバック予約機能付きのビジュアルIVRを導入するのがおすすめです。希望日時の入力なども可能なため「待ちたくない」「もう一度電話するのが面倒」などの顧客のストレスを軽減することもできます。
ビジュアルIVRのデメリット
従来のIVRの欠点をカバーできるビジュアルIVRですが、デメリットも存在します。導入する際は、デメリットも十分理解したうえで検討しましょう。
選択ミスにより問題解決が迷宮入りになる
ビジュアルIVRを導入する際は、ターゲットに合わせた導線設計が必要です。導線がわかりにくいと、顧客に余計なストレスを与えてしまう恐れがあります。例えば、従来のIVRと同じメニューをそのまま導線設計として活用すると、ビジュアル化したときにマッチせず、わかりにくくなる可能性があります。どのような導線が顧客にとってわかりやすいかを重視しながら設計しましょう。
また、顧客が選択をミスしたり操作を誤ったりすると、必要なページとは異なるページへ誘導されてしまうケースもあるでしょう。スムーズに戻れないと、もう一度始めから操作する羽目になり、ストレスを感じさせてしまいます。中には選択ミスによって、問題が解決しないまま迷宮入りになってしまうこともあるかもしれません。顧客の満足度を下げないためにも、導線設計は非常に重要なポイントになります。
導入コストがかかる
導入規模や使用するシステムによっても異なりますが、ビジュアルIVRには導入コストが必要です。特にアプリ型のビジュアルIVRの場合は、幅広い顧客に対応するために「iOSアプリ」と「Androidアプリ」の両方を準備しなくてはなりません。自社独自の機能やブランドイメージにマッチした画面デザインなどにこだわると、コストはさらにかかります。ビジュアルIVRには月々のランニングコストも必要なため、費用対効果をよく検討してみましょう。
ビジュアルIVRの導入時のポイント
最後に、ビジュアルIVRを導入する際のポイントについて、注意すべき点も含めて解説します。
明確な選択肢の設定
どれだけ機能が優れていても、顧客がうまく活用できなければ意味がありません。顧客がストレスなく操作するためには、直感的に操作できる選択肢が必要です。特に分岐が複雑になりやすいメニューでは、顧客が迷わないような選択肢をわかりやすく表示する必要があります。
顧客のニーズに合わせた利用しやすい画面構成
画面構成は、なるべく1ページ内で全体像が把握できるのがベストです。全体の選択肢の中から問題解決方法が見つけやすいようなレイアウトを心がけましょう。また、ターゲット層に合わせた画面構成も必要です。例えば高齢者がターゲットの場合は、文字を大きくする、陰影をはっきりさせるなどの配慮が必要です。若年層がターゲットの場合は、漢字にルビを振る、流行りのビジネス用語を使わないなどの配慮が必要になります。いずれにしても、ターゲットにとってわかりやすい画面構成を心がけることが大切です。
また、運用側が設定変更や内容の更新が簡単にできるかどうかも重要なポイントになります。例えば、HTMLやCSSの知識がないと改善や変更ができない場合は、従業員の負担になることもあるでしょう。自社の体制を考慮したサービスを選択することも必要です。
まとめ
これまでのIVRの欠点をカバーできるビジュアルIVRについて解説しました。ビジュアルIVRにはさまざまなメリットがあり、多くの企業が導入を進めています。ただし、デメリットや注意点もあるため、導入の際は入念な検討が必要です。ご紹介したビジュアルIVRのメリット・デメリットや、導入のコツを、ぜひ参考にしてください。