コールセンターの立ち上げ手順と成功させるためのポイントを解説!
近年、コールセンターの需要が増加し、多くの企業でコールセンターを立ち上げる動きが高まっています。しかし、コールセンターを立ち上げる場合には、さまざまな準備が必要です。今回は、コールセンターを立ち上げる手順や必要なシステム、費用について解説します。また、成功するためのポイントについてもご紹介するので、コールセンター立ち上げを検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
目次
- コールセンターを立ち上げる手順
- 運営目的と目標(KGI)の設定
- 業務プロセスを設計
- サービス提供の仕組みを構築
- 人材育成
- マニュアルの作成
- 実装・検証・改善
- コールセンターの立ち上げに必要なシステム
- CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)
- CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
- PBX(構内交換機)
- CMS(コール・マネジメント・システム)
- 通話録音システム
- IVR(自動音声応答システム)
- コールセンターの立ち上げにかかる費用
- 設備費用
- 維持費用
- 採用費用
- 業務委託での費用
- 立ち上げを成功させるポイント
- 予算に合った規模のシステムを考える
- ニーズに寄り添ったチャネルを用意する
- 業務委託による体制構築も検討する
- まとめ
コールセンターを立ち上げる手順
コールセンターには、大切な顧客との接点を担う重要な役割があります。コールセンターを立ち上げる際は、検討する内容が多いため、効率良くポイントを押さえながら進めていくことが大切です。こちらでは、コールセンターの立ち上げ手順をくわしく解説します。
運営目的と目標(KGI)の設定
まずは、コールセンターを立ち上げる運営目的を明確化します。目的が明確に設定されていないと、従業員は何を目的に業務に取り組めば良いのかがわからないからです。コールセンターを立ち上げる目的は、企業によって違います。「顧客満足度を向上させる」「コストを削減する」などの企業としての課題が、コールセンターを立ち上げたことによってどのように解消されるのか、組織内で共通認識としておくことが重要です。
運営目的が決まったら、次は目標(KGI)を設定しましょう。例えば、「顧客満足度を向上させる」という目的に対しては「顧客満足度を20%向上させる」などの具体的な数値を設定することがポイントです。具体的な数値を設定することで、明確なゴールが設定できます。ただし、目的やゴールは1つとは限らないため、自社の課題解決にあったものを設定していきましょう。コールセンター全体で共有できる数値を設定すれば、目標達成までの活動内容も明確になります。
業務プロセスを設計
目標が決まったら、次はコールセンターを立ち上げた後に想定される業務プロセスを洗い出す必要があります。コールセンターの機能や運用に必要な業務プロセスの例は、以下のとおりです。
・オペレーター業務の1日の流れ
・各オペレーターへの業務の割り振り方
・定期報告の方法・頻度の決定
・マニュアル作成
・緊急時対応方法の明確化
業務プロセスを広範囲にわたって細かい部分まで設計することで、複雑なクレームがあった時や緊急時にも柔軟に対応できます。業務フローや課題を洗い出したら、具体的にどのように対応するかまで検討してみましょう。
サービス提供の仕組みを構築
目標を達成するために、どのようなサービスを提供するのかを明確にすると、必要な業務やスタッフの人数、役割が見えてくるでしょう。サービス提供に必要なオペレーターの人員や、誰がどのようなマネジメントを行うかなど、具体的な人数・役割・配置を決めていきます。コールセンターの規模感や時期・期間によって、追加人員が必要になるかどうかの見極めも必要です。サービス提供の仕組みと人員の役割や工数が割り出せたら、組織体制を明確にし、メンバーに共有してチーム体制を構築します。
人材育成
コールセンターで高い応対品質を維持するためには、人材育成が必要です。オペレーターは、顧客との重要な接点となります。高品質なコールセンターにするために、どのように教育・育成していくのかを入念に計画し、OJTやマニュアルの準備を行いましょう。同時に、どのくらいの期間やコストが必要なのかもあわせて考えていきます。オペレーターを育成する人材の育成方法についてもマニュアル化しておくと便利です。コールセンターは離職率が高い職種でもあるため、長期的に働ける環境づくりを心がけることで、良い人材が定着します。人材育成と同時に、働きやすい環境づくりの準備も行いましょう。
マニュアルの作成
オペレーターがどのような状況でも対応できるように、対応マニュアルを作成する必要があります。準備するマニュアルは電話対応マニュアルだけでなく、以下のように多岐にわたります。それぞれのマニュアルを揃えることで、コールセンターの業務や管理がスムーズに行えるようになるでしょう。
コールセンター立ち上げに必要なマニュアルの例 | |
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オペレーター向け | 電話対応マニュアル、トークスクリプト など |
管理者向け | エスカレーションマニュアル、人材育成マニュアル、品質管理関連・評価マニュアル、オペレーターのシフト管理マニュアル など |
システム操作向け | システム操作マニュアル、ID・パスワードルール など |
実装・検証・改善
コールセンター立ち上げの準備が整ったら、いよいよコールセンターを稼働させます。いざコールセンターが稼働すると、さまざまな課題が見えてくるでしょう。定期的にオペレーションやマニュアルを見直していき、改善していく必要があります。コールセンターを検証・改善するには、短い期間でPDCAを回すのがおすすめです。数週間あるいは1ヶ月単位など、短い期間で「実装」「評価」「改善」を行い、継続的に業務改善を行っていきましょう。
コールセンターの立ち上げに必要なシステム
コールセンター立ち上げの際は、業務フローや業務プロセスに必要なシステムの設計・構築が必要です。こちらでは、一般的なコールセンターが利用する代表的なシステムと概要について解説します。機能的に重複しているシステムもあるので、コールセンターの規模や業態によって、自社に合ったシステムを選ぶのがおすすめです。
CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)
CTIとは、コンピューターネットワークと電話回線をつなぐシステムです。着信したコールを手が空いているオペレーターに均等分配する機能があります。また、顧客の過去の履歴を電話番号に紐づけ、蓄積しているデータをオペレーターのPC上に表示することもできます。顧客対応品質や生産性の向上が可能になるシステムです。パソコンと電話やFAXとを連携でき、通話録音の機能もあるので、トラブル防止にも役立ちます。コールセンターには欠かせないシステムといっても良いでしょう。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
CRMとは、顧客情報管理システムのことです。顧客の年齢・性別・住所・年収・購入履歴などの基礎的な情報が集積できるだけではなく、過去の通話内容なども記録できます。購入履歴や過去の通話内容から顧客のニーズを把握したり、顧客に合った提案やサポートを行ったりするのに役立つでしょう。さらに、トークスクリプトや回答テンプレートを表示できる機能もあります。顧客対応後は、顧客との対話記録や内容をCRMに入力します。
また、一元的に顧客データベースを管理するCTS(コールトラッキングシステム)も、CRMと呼ばれることがあります。CTSは、応対中のオペレーターPC画面に顧客情報を表示させることができ、新たな情報や履歴を直接データベースに追加できます。
PBX(構内交換機)
PBXとは、組織で複数の電話機を利用する場合に設置・運用される電話交換システムです。営業時間外に自動音声で対応したり、顧客のニーズに合わせて担当部署に電話を転送したりすることが可能です。コールセンター専用のPBXのほとんどは、後に説明するIVR(自動音声応答装置)機能を搭載しています。
CMS(コール・マネジメント・システム)
CMSとは、コールセンターの応対データなどを集計・管理できるシステムです。CMSは、コールセンターの運営や戦略を見直すために欠かせないシステムと言えます。各オペレーターの作業状況、待ち呼状況、接続呼の通話時間などをリアルタイムで数値化・可視化することができ、オペレーターが適切に稼働しているかどうかがデータによって把握できます。例えば、時間帯や曜日・月別の呼量データを分析することで、各タイミングの入電数を予測でき、適切な人員数を割り出すことも可能です。さらにチーム別や個人別での業務実績やスキルレベルなどもわかるようになります。長期的・短期的にデータを収集することで、生産性向上やコストダウンにも活用できるでしょう。
通話録音システム
通話録音システムは、顧客との通話内容を録音できるシステムです。後から通話を振り返ることで、応対の品質やトラブルを確認することができます。コールセンターを検証・改善するには欠かせないシステムであり、応対品質の向上や顧客トラブルの予防に役立ちます。
IVR(自動音声応答システム)
顧客がIVRから案内された音声案内番号を入力することで、担当オペレーターや専用スキルを保有するオペレーターへ電話が振り分けられます。IVRの導入によって、内容にくわしいオペレ―ターと始めから対話ができるようになるので、問い合わせ解決までの時間や1人あたりの顧客にかかる処理時間が短縮できます。生産性や業務効率化の向上にもつながるでしょう。顧客の「早く解決したい」「電話をたらい回しにされるのが嫌」という要求にも応えることができます。
コールセンターの立ち上げにかかる費用
コールセンターを立ち上げる際は、先にご紹介したようなシステムが必要になります。そのほかにも、設備費や維持費などさまざまな費用が必要です。立ち上げ時にかかる費用を分類すると、主に以下の4種類にわけられます。
設備費用
コールセンターの立ち上げ時にかかる一般的な内訳は以下のとおりですが、コールセンターの規模・設立目的・セキュリティ要件によって大幅な違いが出てきます。
・コールセンターの場所代(家賃など)
・コールセンターの内装工事費(遮音・防音対策など)
・ネット回線工事費
・ファシリティ(設備):什器・備品・OA機器の購入費またはリース代
・電話周りのシステム費用:電話・PBX・ヘッドセットなど
・各種システムの導入費:導入費用やライセンス料など
コールセンターは、顧客情報や個人情報を取り扱う業務のため、遮音・防音対策が欠かせません。環境が整っていない場合は、対策工事も必要になります。設備費用は、小規模であれば2〜300万円で済みます。しかし、大規模なコールセンターの場合は、数千万単位の費用が発生するケースもあります。社内でコールセンターを立ち上げる場合は、準備のための調査費用が発生する場合もあります。
維持費用
運営費用も設備費同様に、コールセンターの規模によって左右されます。自社ビルの一画にコールセンターを設置する場合は、維持費はさほどかかりません。しかし、コールセンターを開設する際にテナントを契約するのであれば、新たな費用が発生します。維持費用には、コールセンターの人件費をはじめ、家賃・水道光熱費、保守・メンテナンス費用などが含まれます。下記のようなさまざまな要因で費用は変わるので注意が必要です。
・企業の規模
・オペレーターの人数
・システム開発が必要かどうか
・専用オフィスの借り上げの有無
・コールセンターシステムのライセンス料など
採用費用
コールセンターを立ち上げる際に、新たにスタッフを採用する場合は、広告宣伝費や求人媒体利用料など人材採用コストが必要となります。コールセンターの業務内容や地域により人件費は異なりますが、首都圏の場合は一般的に1,500〜1,600円が相場とされています。納得できる報酬額でない場合、人材が定着せず人手不足に陥ることがあるので、注意が必要です。人材不足が慢性化すれば、採用活動を繰り返すことになり、採用や教育にかかるコストが増えてしまうでしょう。人材確保のためには、適正な人材評価と、それに見合った報酬が必要です。また、新たに管理者を採用する場合は、優秀な人材を確保するためのコストも必要になります。求人サイトで募集を行う場合は、掲載箇所や採用人数によって費用が大きく異なります。
業務委託での費用
コールセンターは、業務委託することも可能です。代行会社に委託した場合は、高額な初期費用がかからないことがメリットといえるでしょう。毎月の運用コストも数万円程度で済むので、自社で運営するよりもコストが抑えられます。ただし契約時には、初期費用として契約金が設定されているケースがほとんどです。一般的に金額は1~2万円程度ですが、初期費用無料をアピールする代行会社もあります。契約形態は主に「月額固定型」「従量課金型(1コール当たりの費用で換算)」の2種類です。毎月の利用料金は、対応時間・件数、業務範囲や難易度によっても異なりますが、基本的に1~5万円程度が相場です。業務内容・難易度・対応時間によっては、追加料金やオプションとなるケースもあります。見積もりをよく確認して、利用を検討しましょう。
立ち上げを成功させるポイント
コールセンターの立ち上げは、細かな作業の連続のため、思わぬところでつまずくこともあります。スタートしてしまってからでは途中で中止することが難しいため、プランニングの段階で検討を重ねて、先の見通しを立てておくことが大切です。こちらでは、コールセンターの立ち上げを成功させるために重要な3つのポイントをご紹介します。
予算に合った規模のシステムを考える
コールセンター立ち上げの際には、先にご紹介したとおりさまざまな費用がかかります。できるだけ早い段階で、初期費用や運用コストがどのくらいになるのか、見通しを立てておくことが重要です。大規模なコールセンターや充実したシステムを設置したくても、予算が無ければ適切な設備や人員の確保は難しいでしょう。捻出可能な予算を見ながら、必要なシステムを考えることが必要です。コールセンターを充実させて、顧客満足度を向上させたいという企業は多いですが、高度なシステムを多く導入しようとすれば、当然予算はかかります。コールセンターは企業と顧客を繋ぐ貴重な窓口です。実際には入電が少ないケースも考えられるので、まずはシステムよりも人件費に予算の多くを投入するのも良いでしょう。
ニーズに寄り添ったチャネルを用意する
コールセンターを立ち上げる際は、なるべく多くのチャネルを用意すると、多くの顧客とつながるチャンスが増えます。近年は、コールセンターの利用は電話だけに留まりません。電話に加え、以下のようなツールも多く活用されています。
・メール
・チャット
・SNS
・SMS
・メッセージアプリ
各チャネルの利用率は、顧客の年齢や性別によっても大きく異なるため、自社のターゲット層や顧客ニーズにマッチしたチャネルを用意するのがポイントです。
業務委託による体制構築も検討する
社内でコールセンターを立ち上げるよりも、場合によっては業務委託したほうがコストが抑えられ、効率的なケースもあります。業種や規模によって効果は異なりますが、社内で立ち上げる場合と比べると、業務委託のほうが以下のようなメリットを得られるケースもあるでしょう。
・立ち上げのリソースを減らせる
・短期間でスタートできる
・採用や人材育成のコストが抑えられる
・スペースやシステムなどの固定資産の初期投資を抑えられる
・対応のプロによる委託で効果を最大化できる
コールセンター立ち上げの際は、社内で運用するケースと業務委託による体制を比較検討することをおすすめします。業務委託する場合は、以下のような委託が可能です。
インバウンド業務 (受電・受信) |
・顧客からの問い合わせ対応 ・注文や申込み受付 |
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アウトバウンド業務 (架電・発信) |
・商品注文後のアフターフォローコール ・休眠顧客の掘り起こし ・営業電話によるアポイント ・電話でのインタビュー・市場調査・アンケート調査 |
まとめ
コールセンターを新たに立ち上げる場合は、広範囲にわたる細かな作業を行わなくてはなりません。今回は、立ち上げ手順をはじめ、必要なシステムや費用、立ち上げ成功のためのポイントについてくわしく解説しました。自社で立ち上げる場合と業務委託による体制構築についてもご紹介したので、ぜひ参考にしてください。