自治体にチャットボットが導入される背景とは?ポイントや事例を紹介
総務省では、住民の利便性向上や地方自治体の業務効率化を目的に、地方行政のデジタル化を推進しています。その一環として、チャットボットを導入する地方自治体が増えてきました。
この記事では、地方自治体がチャットボットを導入するメリットやポイントについて解説します。
目次
チャットボットとは
チャットボットとは「チャット(おしゃべり)」と「ロボット」を組み合わせた造語で、チャット上で自動応答をするプログラムです。準備しておいたシナリオどおりに回答するタイプと、AIを用いてシナリオには無い受け答えもできるタイプがあります。
自治体が導入するチャットボットは、自治体への質問や、観光案内などに利用されます。
自治体でチャットボットが導入される背景
地方自治体は住民からの多様な問い合わせに対応する必要があります。チャットボットを導入することで、対応にあたる職員の業務が効率化でき、さらには住民の満足度も向上すると期待されます。
地方自治体がチャットボットを導入するメリットは次の5点です。
人手不足の解消につながる
地方自治体がチャットボットを導入するメリットの1つ目は、人手不足の解消です。
ホームページで疑問が解決しなかった住民は、電話で問い合わせたり、窓口での対応を求めたりするため、職員側の負担が増します。
よくある問い合わせへの返答はチャットボットに任せることで、職員は他の業務にあたれるようになり、人手不足の解消につながります。
人口の減少に伴う働き手不足を雇用で補うことは難しいため、チャットボットの活用は有効な策となるでしょう。
24時間365日対応が可能
メリットの2つ目は、チャットボットであれば24時間365日住民からの問い合わせに対応できることです。
地方自治体の職員が対応するとなると、対応可能な時間は基本的に平日の日中のみです。住民側も問い合わせのために、貴重な休憩時間や有給を使わなくてはならないケースがどうしても出てきます。
チャットボットがあれば住民はいつでも好きな時間に問い合わせができ、また電話や窓口のように待ち時間も発生しません。住民の利便性が増し、満足度も向上するでしょう。
緊急時にも対応できる
チャットボットのメリット3つ目は、緊急時にも対応できることです。
休日や夜間に災害が発生した場合、地方自治体の窓口は閉まっているため、住民からの問い合わせにすぐ対応できません。また、業務時間内であったとしても災害時には問い合わせが多くなるため、電話もつながりにくくなると考えられます。
チャットボットであれば、緊急時でも住民からの問い合わせに対して、地域の指定避難場所や避難方法を回答できるため、住民の安心感も高まります。
導入が比較的簡単である
チャットボットのメリット4つ目は、導入が比較的簡単なことです。
特にAIプログラムに対しては、「費用対効果が良くない」「データの管理が難しい」などの印象をお持ちの方もいるでしょう。
チャットボットには、既に商用化されている地方自治体向けの商品があります。地方自治体での導入例・運用例も多いため、これまでの経験の蓄積を生かした導入が可能です。
住民のニーズがくみ取れる
地方自治体がチャットボットを導入するメリットの5つ目は、住民のニーズをくみ取れることです。
チャットボットにはログ機能があるため、住民からの問い合わせを記録として蓄積できます。ログを分析することで、「多く寄せられている質問は何か」「解決に至らなかった質問はどのような内容か」など、住民の問い合わせ内容を把握できます。
分析の結果は、チャットボット自体の改良はもちろん、自治体が担当するサービス全体の質的向上に役立ちます。
チャットボットが担当できる業務
地方自治体におけるチャットボットの主な用途として「住民お問い合わせ対応」「観光客対応」「自治体内部対応」の3つが挙げられます。
それぞれの用途において、チャットボットが担当できる内容を具体的に解説します。
住民お問い合わせ対応
地方自治体でのチャットボット利用用途で最も多いものが、住民からのお問い合わせ対応です。
チャットボットを地方自治体ホームページのトップに設置すれば、住民からの質問に対し最も関連性の高いページへと誘導できます。また、考えられる質問とその回答をあらかじめ準備しておけば、24時間365日、住民を待たせることなく対応が可能です。
自動翻訳機能やシナリオに対応する翻訳テキストを備えたチャットボットであれば、多言語に対応でき外国人住民からの問い合わせにも返答できます。
観光客対応
チャットボットは住民向けサービスだけでなく、地域を訪れる観光客のコンシェルジュとしても活用できます。
地方自治体の観光情報サイトにチャットボットを設置すれば、おすすめの観光スポットや周辺の飲食店、お土産情報などを観光客のニーズに合わせて案内可能です。多言語対応のチャットボットであれば、外国人観光客への案内もできます。
観光客の満足度が上がれば、リピートや口コミ効果で今後の訪問者増加も期待できるでしょう。
自治体内部対応
住民向け、観光客向け以外の用途として、チャットボットに地方自治体内部のヘルプデスク業務を任せることもできます。
DX推進の影響で近年、地方自治体でもクラウドサービスや新たな情報システムの利用が増加しています。それにより職員から担当部署へ、操作方法の問い合わせも増えていますが、チャットボットで内部の問い合わせを自動化すれば効率化ができます。
DX担当職員の人手不足をチャットボットで補うことで、サービスの質を継続できるでしょう。
チャットボットの導入事例
実際にチャットボットを導入した地方自治体ではどのような効果があったのか、具体的な事例を知れば導入後の効果をイメージできるでしょう。
ここでは「福島県会津若松市」「東京都港区」「神奈川県海老名市」の事例を紹介します。
福島県会津若松市
福島県会津若松市では、チャットボットによる「LINE de ちゃチャット問い合わせサービス」を提供しています。普段から使い慣れているLINEで「ゴミの出し方」や「休日・夜間診療に対応している病院」などを問い合わせ可能です。
こちらのサービスは、市民アンケートの結果で満足度80%以上と高評価を得ています。また、簡易な問い合わせにチャットボットが対応することで、職員はその他の必要業務に注力できるようになりました。
東京都港区
外国籍の住民が約2万人居住する東京都港区では「多言語AIチャット」を用い、外国人に向けた情報を発信しています。Facebookのメッセンジャー機能を通して、防災や医療など行政に関わる問い合わせに、AIが英語とやさしい日本語で回答するサービスです。
問い合わせ対応以外にも日本ならではの生活習慣、文化の違いについての紹介も盛り込まれています。英語で気軽に質問できるチャットの存在は、外国人住民が地域へ愛着を持つことにも一役買っています。
神奈川県海老名市
神奈川県海老名市では、市ホームページとLINEにチャットボットを導入しています。
イメージキャラクターのえび~にゃと会話を進めていくと、目的の情報にたどり着ける仕組みです。えび~にゃの回答には語尾に「にゃ」が付くため、自動応答でありながら親しみも感じられます。
海老名市のチャットボットはAI非搭載のシナリオタイプで、あらかじめ準備した想定質問に対応するシステムです。回答できない場合はシステムへの要望を書き込む画面へと進むようになっており、住民の要望を収集し精度の向上も図っています。
チャットボット導入のポイント
地方自治体でのチャットボット運用を成功させるには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
チャットボットのメリットを最大限活かすためにも、導入時には下記のポイントに着目しましょう。
チャットボットに任せる業務を明確化する
チャットボットを導入するにあたって、何を目的に導入するのか、どの業務を任せるかを明確にしましょう。
たとえば「よくある質問の対応にはチャットボットを活用し、職員の業務負担を減らす」ことが目的だったとします。目的にそぐわない回答精度の低いAI型チャットボットを導入してしまうと、希望の回答が得られなかった住民からの問い合わせで、余計に混乱する事態になりかねません。
チャットボットの導入目的や担当業務を初期段階で明確にしておくことは、非常に重要です。
わかりやすい場所に設置する
住民に存在を知ってもらうために、チャットボットは分かりやすい場所に設置しましょう。住民がチャットボットの存在に気付かなければ、利用もしてもらえません。
地方自治体のホームページ上に、総合案内として目立つアイコンを設置することで、訪れた住民の目につき、利用してもらえる率が上がります。また、トップページのみでなくお問い合わせページにもアイコンを表示させておけば、問い合わせに訪れた住民が疑問解決のため利用する確率が高まります。
キャラクターを利用する
チャットボットに地方自治体のキャラクターを利用することで、双方の認知度が高まります。キャラクターの存在をPRできれば他地域からの注目度も上がり、観光やグッズ販売など経済効果を得られる可能性があるため、積極的に活用しましょう。
また、親しみやすいキャラクターを用いると、問い合わせる際のハードルが下がるため、利用率の向上も見込めます。チャットボットが質問に答えられない場合も、キャラクターの雰囲気で許せてしまうため、不満につながりにくい点もメリットといえるでしょう。
運用が簡単なものを選ぶ
地方自治体に導入するチャットボットを選ぶ際は、運用が簡単なものを選択しましょう。
チャットボットを利用する住民が常に新しい情報を得るためにも、登録した情報は最新の状態に更新する必要があります。情報の追加作業や更新が簡単で、なおかつサポートも充実したチャットボットを選べば運用がスムーズです。
更新作業が複雑なチャットボットを選んでしまうと、作業に時間や人手が取られたり、更新が滞ったりする恐れがあります。
外部に運用を任せるのも検討価値あり
地方自治体で効果的にチャットボットを活用するために、外部に運用を任せるのも選択肢の1つです。
自分たちで運用するに越したことはありませんが、チャットボットを運用できる人員がいない場合は、運用の代行依頼も検討してみましょう。
まとめ
この記事では、地方自治体がチャットボットを導入するメリットや担当できる業務について解説しました。
紹介した事例のように、チャットボットを既に導入している地方自治体では、職員の業務を効率化できたり、住民の満足度が高まったりしています。地方自治体にとっても課題である働き手不足は、チャットボットの導入でカバーできる可能性があります。
住民サービスの質を向上させるためにも、チャットボットを有効活用しましょう。
日本トータルテレマーケティングでは、地方自治体でのチャットボット導入を支援しています。複数の導入実績から、各々の地方自治体に応じた提案をさせていただきます。チャットボット導入をご検討の際はぜひご相談ください。