マイナンバー業務は委託できる!業者の選び方・メリットについて解説
マイナンバー制度は一括して国民の行政手続きを行い、効率化を図る方策の1つとして2015年に始まった制度です。
政府は、国民全員のマイナンバーカードの交付とともに、保険証や運転免許証、銀行口座などとマイナンバーとの紐付けを推進しています。
2023年時点で、日本の人口は1億2330万人で、自治体の職員のみの対応で賄いきれる数ではありません。
そこで、マイナンバーに関する業務を外部へ委託する方法があります。
今回は、マイナンバー業務を委託する方法について、ガイドラインや法律を紹介しながら説明します。
目次
- 自治体のマイナンバー業務は外部に委託できる
- マイナンバーの業務委託先を選ぶ基準
- マイナンバーを適切に管理できているか
- 委託先の設備が整っているか
- マイナンバー業務に対する知識・実績があるか
- マイナンバーを保護するための安全管理措置
- 組織的安全管理措置|責任者を設置すること
- 人的安全管理措置|安全管理の教育を行うこと
- 物理的安全管理措置|PCやUSBメモリを管理すること
- 技術的安全管理措置|セキュリティ対策を実施すること
- 外部に委託可能なマイナンバーに関する業務内容
- 窓口運用業務|申請・交付業務を補助する業務
- コールセンター業務|お問い合わせや来庁予約に対応する業務
- Web予約システムの構築|手続きをスムーズにする業務
- マイナンバー業務を委託するメリット
- マイナンバー業務に必要な人材を確保できる
- 申請や更新時の手続きを効率化できる
- 来庁者の負担を軽減できる
- マイナンバー業務を委託する際の注意点・ポイント
- 委託の範囲に応じて相応の費用がかかる
- 情報漏えい事故が発生した場合は対応が必要になる
- 外部に委託する際は監督責任が伴う
- 業務委託契約書に必要な記載事項を押さえておく
- まとめ
自治体のマイナンバー業務は外部に委託できる
自治体のマイナンバーに関する業務は民間業者へ委託できます。
政府も行政業務の民間委託を進めてきた経緯があり、マイナンバー業務も民間委託を進める方針です。
総務省では、各地方自治体で行政サービス業務の民間委託に関する取り組み状況を開示することを公表しています。
地方行政を効率的に進めるためにも、マイナンバーを含めた民間委託は積極的に活用していくことが望まれます。
マイナンバーの業務委託先を選ぶ基準
ここでは、マイナンバーの手続きを民間企業に業務委託するうえでの選ぶ基準を解説します。
マイナンバーを適切に管理できているか
マイナンバーを適切に管理できる民間企業を選びましょう。
マイナンバーは「特定個人情報」であり、マイナンバー法第9条に基づいて適切に管理する必要があります。
「特定個人情報」とは
マイナンバーに代表される個人情報を含む情報の集まり。個人情報を検索できるように体系的に構成したもの。
個人情報保護委員会が取りまとめているガイドラインによると、特定個人情報に関して以下の3つを充足する必要があります。
- 利用の制限:児童扶養手当、年金など
- 提供の制限:社会保障と災害対策に限る
- 安全管理措置
具体的には後述しますが、なかでも安全管理措置はさまざまな内容を網羅する必要があり、委託先の選定が求められます。
委託先の設備が整っているか
委託先を選定する際は、マイナンバーという個人情報を守れる設備があるかを事前に確認して判断しましょう。
情報漏えいを防止するには、マイナンバーの取扱業務が設備内で完結する必要があります。
具体的には、空間・時間・人・情報・物の流れを制限する設備がある企業が基準です。
適切な保管体制やシステム構築が必要
マイナンバーを扱う企業には、適切な保管体制とシステムの構築が求められます。
マイナンバー業務は、以下の順序で運用します。
収集→利用→提供→保管→廃棄・削除
一連の流れすべてで、個人情報漏えいを防止する管理が大切です。
具体的には以下のとおり、セキュリティー対策に特化した設備がある企業を選定しましょう。
- マイナンバーの関連書類を保管する棚や引き出しに鍵を設置している
- マイナンバーの関連ファイルを保管したPCにセキュリティコードを設定している
- 管理する部屋に出入りする人を監視できる設備を設置している
- 管理する部屋自体にオートロックを施している
マイナンバー業務に対する知識・実績があるか
マイナンバーに関する知識・実績があるかは、マイナンバーの委託先を決める大きな基準の1つです。
前述の通り、マイナンバーの手続き業務に関しては、法律の遵守や情報セキュリティの徹底が求められます。
業務実績は、今まで滞りなく業務を遂行できているか否かの指標になり、ガイドラインへの理解度から知識量を査定できます。
知識・実績を測る具体的な方法の一例として挙げられるものが、複数の民間企業に企画提案書を提出してもらう方法です。
企画提案書に受託実績や理解度を測る評価基準表を設けると、比較検討に役立つでしょう。
マイナンバーを保護するための安全管理措置
前述の通り、マイナンバーの手続きを業務委託するにあたって、民間企業が安全管理措置を講じているかを確認する必要があります。ここでは、4つの安全管理措置を解説します。
組織的安全管理措置|責任者を設置すること
マイナンバーを取り扱う企業には、マイナンバー法やそのガイドラインを遵守でき、かつ取扱規定に基づいて運用できる組織体制を整備していることが求められます。
くわえて、情報漏えいや取扱規程に対する違反が生じた際、責任の所在をはっきりさせるために、責任者の設置が求められます。
また、業務委託を依頼する自治体にも、監督義務が必要です。
人的安全管理措置|安全管理の教育を行うこと
マイナンバーの業務委託を選ぶ際には、企業が安全管理に関して研修・周知を行っているかを確認しましょう。
情報漏えいで最も多い要因の1つとして、ヒューマンエラーが挙げられます。
また委託先の選定後は、非開示契約を結び、安全管理を徹底しましょう。
物理的安全管理措置|PCやUSBメモリを管理すること
物理的な安全管理措置を行っている企業を選定しましょう。
具体例としては、以下が挙げられます。
- 建物への入退館・部屋への入退室を管理している
- 盗難対策でロッカーを設置している
- 機器を物理的に保護している
技術的安全管理措置|セキュリティ対策を実施すること
技術的な安全管理措置とは、マイナンバーに関するあらゆるセキュリティ対策のことです。
マイナンバー業務の運用には、情報システムを利用します。
情報システムは外部から被害を受けないような取り組みを行っている企業を選定しましょう。
- 不正アクセス対策:個人データへのアクセスに関する識別、認証、制御、権限管理、記録
- 不正ソフトウェア対策:個人データの移送、通信
- 情報システム管理:動作確認、監視
外部に委託可能なマイナンバーに関する業務内容
ガイドラインにおいて、委託可能なマイナンバー業務は「個人番号利用事務」と「個人番号関係事務」です。
具体的には、窓口運用業務やコールセンター業務、Web予約システムの構築などが該当します。
窓口運用業務|申請・交付業務を補助する業務
マイナンバーの窓口運用業務としては、申請・交付補助業務があります。
業務内容は書類確認や本人確認をする窓口対応です。
その他、申請補助業務には以下があります。
- 出張会場の運営
- 休日運営
- 写真撮影
- マイナンバー制度
また、交付補助業務には、交付代行としてマイナンバーに関する通知書兼照会書の発送や準備、電話対応があります。
コールセンター業務|お問い合わせや来庁予約に対応する業務
コールセンター業務は各種問い合わせや来庁予約に対応する業務です。
また、場所の制約でコールセンターを設置できない際には、コールセンター履行場所を設営します。
多くの人口を抱える自治体では、コールセンターの対応も手一杯になっているでしょう。
スタッフの人員確保も兼ねて、コールセンター業務を委託することが得策です。
Web予約システムの構築|手続きをスムーズにする業務
Web予約システムの構築とは、煩雑になるマイナンバーの手続きを円滑にするためのシステム開発・導入支援です。
電話予約は営業時間外での予約が不可能です。
Webなら24時間アクセス可能でいつでも予約でき、混み合うこともありません。
専門知識の必要な予約システムの構築は、専門業者に委託した方が早いうえ、クオリティーも高く、一般のニーズにも応えられます。
マイナンバー業務を委託するメリット
ここでは、マイナンバー業務を委託するメリットについて紹介します。前述した基準で民間企業を上手く選定して、自治体のマイナンバー業務を効率化しましょう。
マイナンバー業務に必要な人材を確保できる
マイナンバー手続きの実績がある民間企業に業務委託することで、人手不足を解消できます。
自治体はマイナンバー業務に追われることなく、他の従事している業務に集中できるでしょう。
申請や更新時の手続きを効率化できる
マイナンバー業務の委託は、その業務だけに範囲が限定されるため、事務手続きを効率化できます。
特にマイナンバー業務の実績がある企業に委託すれば、教育コストや稼働効率の簡略化が可能です。
来庁者の負担を軽減できる
専門担当者がいると、来庁者の待ち時間短縮と書類記入の煩雑さが軽減します。
役所へ各種手続きのために出向くと、長い待ち時間ができます。
その待ち時間や複雑な書類への記入は来庁者にとって負担です。
また、民間業者の丁寧な接客と円滑な業務遂行は、来庁者の負担も軽減させます。
マイナンバー業務を委託する際の注意点・ポイント
マイナンバー業務の委託においては注意点があります。事前に把握して、業務委託の依頼先を選びましょう。
委託の範囲に応じて相応の費用がかかる
委託する業務の範囲に応じて費用がかかります。
同様に、業務継続が長期にわたると、期間に応じた費用が発生します。
ただし、業務は一括して委託したほうが手続き上効率的にはなるため、予算から得られる効果を検討して判断しましょう。
情報漏えい事故が発生した場合は対応が必要になる
委託先から個人情報の漏えいや盗用があった際、マイナンバーを取り扱う主体である自治体は、委託先とともに責任を問われることがあります。
また、マイナンバー業務に関しては報告義務があり、委託先の民間企業よりも自治体の方が主体となる対応が必要です。
外部に委託する際は監督責任が伴う
自治体は、委託先がマイナンバー法や個人情報保護法に基づき、安全管理措置を講じているかについての監督義務とそれにともなう責任があります。
したがって、個人情報の漏えいや盗用が生じた際、自治体も監督責任を問われ、委託先の民間企業と共に罰せられる可能性があります。
委託先の設備や技術レベル、従業員への監督・教育、経営環境に対して、確認・見直しが常に必要です。
業務委託契約書に必要な記載事項を押さえておく
業務委託契約書には、契約締結後に困らないよう必要な記載事項を押さえておきましょう。
具体的には、契約書に以下を記載する必要があります。
- 特定個人情報の持ち出し、目的外利用の禁止
- 秘密保持義務
- 漏えい事案における委託先の責任
- 契約終了後の個人情報の返却又は廃棄
- 委託先への監督、教育再委託条件
- 契約内容の遵守
問題発生時における、報告が要求される事項の記載は最低限盛り込む項目です。
まとめ
政府はマイナンバーカードを全国民に交付することを目指し、健康保険や銀行口座、運転免許証などの紐付けを推進しています。
マイナンバーの業務委託は、民間活力の利用や業務の効率化、DXを図る政策の1つです。
マイナンバー業務委託を通して、自治体職員の業務軽減だけでなく、民間の力を利用した行政のDXを期待できます。
自治体が社会資源を有効利用することで、経済活性化とIT化社会の礎として今後、ますます活用機会が増えるでしょう。