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IVRの基礎知識~コールセンター現場の問題解決につながる!?~

現在、多くの企業がIVRを導入し、コールセンターにおいても業務効率化や生産性の向上を目的として検討する企業が増えています。今回はIVRの概要をはじめ、具体的なメリット・デメリットや活用場面などをくわしく解説していきます。顧客との重要な接点となる窓口にIVRを効果的に導入することができれば、顧客満足度も高まるでしょう。


IVR(Interactive Voice Response)とは

IVR(Interactive Voice Response)とは、「音声自動応答装置」といい、音声によって自動で応答する装置を表します。多くの電話受付窓口で利用され、コールセンターでも活用されている装置です。こちらでは、IVRが重視される背景や具体的な性能・仕組みについて解説します。

IVRの由来と重視される背景

コールセンターが誕生したのは、1980年代です。1900年代になると電話内線をデジタル制御する「CTI」が導入され、同時にIVRも活用されるようになりました。2000年代に入ると、AIの進化によってIVRはさらに広まっています。IVRを導入することによって、顧客が求める担当者に電話を振り分けることが可能になるため、新人オペレーターが高度な対応を迫られる可能性を低くできます。また、既存オペレーターの負担を減らすことも可能です。現在は、どの業界においても慢性的な人手不足が問題視されているため、IVRが注目されるようになりました。特にコールセンター業界では離職率が高く、業務効率化を図るために多くの企業がIVRを導入しています。

IVRの性能

IVRは、顧客からの問い合わせに対して音声認識やプッシュボタン操作の案内を流し、顧客に操作してもらうことで適切な担当者へ振り分けることが可能です。多くの問い合わせ電話を適切に振り分けられることは、従業員の負担軽減や業務効率にもつながります。また顧客にとっても、たらい回しにされて担当者が何度も変わることがないため、高い満足度につながるでしょう。

IVRの仕組み

IVRは導入の際に、顧客からの問い合わせ内容をあらかじめ想定した音声メッセージを準備し、同時に音声メッセージに合わせた複数の選択肢を用意します。例えば以下のケースの場合は、顧客が商品の故障について問い合わせをしたいときに、音声メッセージを聞いて「2」をプッシュすると、故障受付のオペレーターにつながるという仕組みです。

番号 想定した音声メッセージの内容 担当オペレーター
1 商品の使い方 商品担当オペレーター
2 故障に関する問い合わせ 故障受付オペレーター
3 資料請求 自動受付
4 その他 総合受付オペレーター

音声メッセージと顧客のプッシュ操作を何度か繰り返すと、より適切なオペレーターにつながる仕組みをつくることもできます。例えば電化製品などのメーカーの場合は、故障に関するお問い合わせの後、商品ごとに「1 AV製品」「2 スマートフォン」「3 ゲーム」など、商品の分類番号を押すことで、担当ジャンルの故障受付オペレーターにつなげることができます。問い合わせ内容が難しい場合は、総合受付のオペレーターに直接つなげることも可能です。

IVRとVRU(Voice response unit)との違いについて

IVRと似たサービスとしてよく挙げられるのが、「VRU(Voice response unit)」です。VRUは、「音声応答装置」と呼ばれています。IVRと同じような意味で扱われるケースもありますが、細かく分類すると、VRUは発信者の情報を管理・保管して運用するのが目的です。IVRとVRUは、厳密には意味が異なるものの、同義として使用されることもあります。

IVRの種類

IVRには、以下のような種類があります。それぞれの特徴や、どのような企業やケースで活用されているのかを解説します。

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オンプレミス型IVRとは

オンプレミス型IVRとは、CTIシステムと呼ばれる専用装置を使用してシステムを構築しているIVRです。自社で運用・管理を行うもので、大手コールセンターや金融機関など大規模な企業で採用されることが多いようです。自社で運用を完結させることができるため、必要に応じたカスタマイズができます。

クラウド型IVRとは

クラウド型IVRとは、IVRのサービス提供を行っている企業のサーバーシステムを利用するIVRです。IVRはクラウド上に設置されているため、インターネットに接続できる環境であればどこからでも利用できます。既にシステムが整っているIVRを利用するため、初期費用が安い点もメリットです。ただし、オンプレミス型IVRと比較すると、自社のシステムと連携させる自由度が低いデメリットがあります。繁忙期などの短い期間のみIVRを利用したい場合や、IVRを試しに使ってみたい場合に向いています。

ビジュアルIVRとは

一般的なIVRは、音声によって自動案内する顧客対応を行います。しかし、ビジュアルIVRは、パソコンのWebサイトやスマートフォンのアプリなどで案内の内容を可視化できるIVRです。まずは顧客に対し、SMS(ショートメッセージ)に、案内用のURLを送信した旨を伝えます。顧客がそのURLをクリックすると、IVRの案内内容が記載されたサイトへ誘導される仕組みになっています。顧客は、サイトの指示に従って、メニューを選んだり設問の答えをクリックしたりすることで、問題を解決できます。

音声による自動案内では聞き逃してしまうことがありますが、ビジュアルIVRは目で見て操作できるため、聞き取りが苦手な顧客にも対応できるでしょう。ビジュアルIVRを活用すれば、問題解決につながるFAQサイトやチャットボットへ顧客を案内することもできます。顧客自身で解決できるため、オペレーターの負担も軽減され、人件費の削減も期待できます。

IVRのメリット

IVRの役割や種類がわかったところで、IVRを導入することによって得られるメリットをご紹介しましょう。

オペレーターの能力に合わせた対応

IVRは、顧客の問い合わせ内容に応じて、対応できるスキルをもったオペレーターに優先してつなぐことが可能です。スキルをもたないオペレーターにはつながらないようにできるため、難易度の高い問い合わせに新人オペレーターが対応することも防げます。オペレーターの経験不足による商品知識や対応力の低さから、クレームを入れられることも少なくなるでしょう。また、顧客が求める担当者に直接つながるため、いわゆる「たらい回し」が起きにくく、顧客満足度や応対率を上げることもできます。

業務効率化による人件コスト削減

企業には問い合わせの電話や間違い電話、電話営業など、さまざまな電話がかかってきます。IVRを活用すれば、不要な電話をシャットアウトできる効果もあります。対応者が本来の業務に加え、担当業務外の問い合わせ対応も行っている場合、電話対応業務が大きな負担となってしまいます。IVRを導入することで、対応する電話件数を減らすことができ、本来の業務に時間を費やせます。

また、顧客の問い合わせによっては、有人対応ではなく定型メッセージだけでも対応できるケースもあります。IVRを導入すれば、有人対応と無人対応の切り分けが可能なため、定型メッセージだけで済むような内容であれば、オペレーターを必要としません。本来対応するはずの人員を削減できるため、人件コスト削減につながります。

若手の離職率の軽減

新人オペレーターは研修期間を経て業務に入りますが、研修期間は収入が低くなる傾向があるため、十分なスキルを備えるために研修期間を長くしすぎると若手の離職率が高くなります。離職率を下げるためには、早く現場に出て業務に慣れてもらい、通常の収入を得てもらわなくてはなりません。

IVRを導入し、まずは新人でも対応できる内容問い合わせだけをつなぐように設定すれば、実際の現場を体験しながら業務に慣れてもらうことができます。経験が少ない新人でも、安心して業務に取り組むことができ、詰め込み研修にならずに済む点もメリットです。研修期間が短期間になれば、離職率を軽減することもできるでしょう。

IVRのデメリット

IVRは多くのメリットが得られる一方で、以下のようなデメリットもあります。

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顧客のストレス増加のリスク

IVRは音声データを使用するため、多くの選択肢を読み上げるまでに時間がかかったり、最後まで聞かないと先に進めなかったりして、顧客がストレスを感じるケースがあります。聞き取れなかった場合は、もう一度同じ音声を聞かなければならず、ストレスが増加するリスクが懸念されます。顧客のストレスを溜めないためには、案内文はできるだけ簡潔にし、選択肢の数を適切にするなどの対応策が必要です。

適切な選択肢の設定がないと「その他」のお問い合わせにつながる量が増加

企業側が適切に選択肢を準備しているつもりでも、何を選んだら良いかわからない顧客は「その他」を選んでしまう傾向があります。案内が複雑であればあるほど「その他」を選ぶ傾向があり、「その他」の担当者に問い合わせが集中してしまうこともあります。IVRの設定の際は、顧客の傾向をリサーチし、選択肢の集中化を防ぐ対策も必要です。

IVRの活用場面

さまざまな業界・企業においてIVRは活用されています。こちらでは、3つの業界での活用場面をご紹介します。

コールセンター・コンタクトセンター業

IVRはオペレーターの能力に合わせた振り分けや業務の効率化による人材コスト削減、若手の離職率の軽減などが可能なため、多くのコールセンターやコンタクトセンター業で活用されています。「現在の所持ポイントを確認したい」「来店予約をしたい」したいなど、単純で決まった形の問い合わせが多いコールセンター・コンタクトセンター業は、IVRの導入に向いています。

金融や保険などのサービス業

金融・保険業は「契約」「振込」「滞納の相談」など、ある程度問い合わせ内容が定型化しています。そのため、専門オペレーターにつなげられるだけではなく、IVRの自動音声のみで解決してしまうケースもあります。金融・保険業は、自動音声によって対応できる入電が多く、IVRとの相性が良い業界といえるでしょう。また、金融・保険業には、新生活による口座開設や保険の新規契約・見直しが行われやすい繁忙期があります。IVRを活用すれば、問い合わせの増加が見込まれる繁忙期でも、効率的な応対が可能です。

行政機関

行政機関には「税金」「福祉」「教育」など、さまざまな窓口があります。それぞれに「案内」「受付」「予約」などの業務があり、限られた人数で対応しなければなりません。窓口のなかには、業務の特性上、人による受付や架電よりも、自動音声が適している業務もあります。また、行政機関はあらゆる年齢層に対応していますが、なかにはWeb操作が苦手な世代やメール・SNSが苦手な人もいるでしょう。そのようなケースにおいては、誰でも比較的操作がしやすい電話によって適切な窓口を紹介できるIVRが効果的です。

行政機関は、転入・転出や確定申告などの時期、健康診断や予防接種の受付期間など問い合わせが集中する時期があります。IVRは混雑する時期における職員の負担を減らす手段として、重宝されています。

IVRの導入について

IVRの導入をいつ行ったら良いか、導入後はどのような変化をもたらすかイメージしにくいという方は多いでしょう。そこで、導入のタイミングや、導入後の変化についてご紹介します。

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導入のタイミングとは

オペレーターの数が足りないと感じたときが、導入のタイミングです。オペレーターの対応人数が少ない場合、顧客を待たせてしまうことになり、顧客満足度の低下だけではなく利益の機会損失にもなってしまいます。IVRは顧客データを取り込み、商材のターゲット層を絞り込んでから自動的に音声発信できます。休眠顧客の掘り起こしや新規開拓などに注力するタイミングでも、IVRを導入するのは得策です。

導入の前と後の変化

IVRを導入することによって、以下のようなメリットが得られ、企業によって大きな変化がもたらされるでしょう。

・応答率の向上
・顧客満足度の向上
・入電振り分けによる生産性向上
・オペレーターの負担の軽減
・人手不足の解消
・人材コスト削減
・営業時間外の対応
・情報漏洩リスクの低下

IVRのデメリットである「顧客のストレス増加」のリスクを軽減したい場合は、案内の内容を可視化できるビジュアルIVRと連携するのもおすすめです。

オペレーターの負担が大きすぎると、貴重なビジネスチャンスも逃しかねません。IVRはオペレーターの作業効率を高めるだけではなく、顧客側にも「待たされない」「時間外でも対応してもらえる」などのメリットをもたらします。

まとめ

IVRは、コールセンター・コンタクトセンターをはじめとする多くの業界で活用されています。今回はIVRの概要をはじめ、メリット・デメリット、活用事例などを解説しました。IVRは、さまざまな企業が抱えている人手不足や離職率の問題を解決するのに一役買ってくれるでしょう。ご紹介した内容を参考に、ぜひ導入を検討してみてください。


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